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 2021年10月に和歌山市で起こった六十谷(むそた)水管橋の崩落事故を受け、厚生労働省は全国の水管橋について5年に1回以上の定期点検を義務付ける。22年度内の省令改正を目指す。ドローンなどデジタル技術を用いた点検手法も認める。22年9月27日に開いた「水道の諸課題に係る有識者検討会(座長:滝沢智・東京大学大学院教授)」で方針を示した。

全国の上水道事業者と水道用水供給事業者を対象とした厚生労働省の調査結果。水管橋などについて5年に1回以上の定期点検を実施している事業者は71%だった。規模が小さい事業者は定期点検を実施していない場合がある。2022年8月5日から29日にかけて調査し、1344事業者が回答した(出所:厚生労働省)
全国の上水道事業者と水道用水供給事業者を対象とした厚生労働省の調査結果。水管橋などについて5年に1回以上の定期点検を実施している事業者は71%だった。規模が小さい事業者は定期点検を実施していない場合がある。2022年8月5日から29日にかけて調査し、1344事業者が回答した(出所:厚生労働省)
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 現行の水道法の規定では、水管橋の点検の頻度を具体的に定めていない。「適切な時期」に目視などで点検するよう求めているだけだ。一方、道路施設や下水道施設、上水道施設のうちコンクリート構造物については、5年に1回以上の定期点検を法令で義務付けている。

 全国の上水道事業者などを対象とした厚労省の調査によると、管理する水管橋の点検頻度が5年に1回よりも少ないと答えた事業者の割合は29%だった。12%は、そもそも定期点検を実施していなかった。特に、規模が小さい事業者ほど定期点検に手が回っていない。

 省令の改正で、道路や河川、鉄道の上空に架かる水管橋に対し、5年に1回以上の定期点検を義務付ける。点検手法は目視を標準としつつ、ドローンなどデジタル技術の活用も認める。また、これまで規定していなかった点検・修繕記録の保存を必須とする。

 道路の点検で実施している「近接目視」は求めない。水管橋は、管路を金具で支持しただけの「パイプビーム形式」など道路橋と比べて単純な構造のものが多いからだ。それら全てに法令で近接目視を義務付けるのは過剰だと判断した。

 ただし、補剛部材や支持金具など劣化によって水管橋の崩落を招く恐れがある部材については、近接目視で詳細に状態を確認する必要がある。水道施設の点検や修繕に関するガイドラインを改定し、近接目視が望ましい部材などを記載する。

全国の水管橋の形式別の割合。六十谷水管橋のような「水管橋補剛形式」は全体の3%で、大半は「水管橋パイプビーム形式」や「橋梁添架管」など比較的単純な構造だ(出所:厚生労働省)
全国の水管橋の形式別の割合。六十谷水管橋のような「水管橋補剛形式」は全体の3%で、大半は「水管橋パイプビーム形式」や「橋梁添架管」など比較的単純な構造だ(出所:厚生労働省)
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