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 阪神高速大和川線のたて坑工事を巡り、設計ミスで工費が増大したとして、発注者の大阪府が設計者の日本シビックコンサルタント(東京・千代田)に約61億9000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2022年9月29日、大阪高裁であった。高裁は、府と設計者の双方に過失があったと認めたうえで、府の過失割合を8割とした一審判決を変更し、4割に減じた。府が事実上の敗訴から「判定勝ち」に持ち込んだ形だ。

関係者の見解。開削区間を掘削する前から、たて坑の安定性について懸念の声が上がっていた(出所:裁判資料を基に日経クロステックが作成)
関係者の見解。開削区間を掘削する前から、たて坑の安定性について懸念の声が上がっていた(出所:裁判資料を基に日経クロステックが作成)
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 府は、日本シビックの賠償額を約2億2000万円(遅延損害金を除く)とした一審判決を不服とし、控訴していた。判決では、一審で約9億7000万円と算定した損害額を約6億6000万円に低減。日本シビックに対し、損害額の6割に遅延損害金を合わせた約6億2000万円を府に支払うよう命じた。

 一審と同様に、府が主張した日本シビックの設計ミスは認めず、受発注者間の認識の共有などで双方に過失があったと認定。一審では、府の注意義務違反は重大だとしたものの、控訴審では府の過失は設計者を上回らないと判断した。

 問題となったたて坑は、大和川線の常磐東ランプと本線が合流する区間の両端に位置する。ニューマチックケーソン工法で構築した後、たて坑に挟まれた延長200mの区間を開削した。

問題となったランプ・本線合流部の概要(出所:大阪府などの資料を基に日経クロステックが作成)
問題となったランプ・本線合流部の概要(出所:大阪府などの資料を基に日経クロステックが作成)
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 日本シビックは06年に、たて坑や本線シールドトンネルなどの詳細設計を府から2800万円で受注した。開削区間の詳細設計は日建技術コンサルタント(大阪市)が担当。吉田組(兵庫県姫路市)などのJVが、2つのたて坑の他、開削区間の土留めとなる地中連続壁や掘削などの施工を手掛けた。