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 NejiLaw(ネジロウ、東京・文京)はIHI、IHIインフラシステムと共同で、センサー機能を備えたネジによる長大吊(つ)り橋のモニタリングシステムの運用を開始した。離れた場所から橋の部材間で生じる応力を常に把握でき、地震や強風があれば部材の損傷度合いをAI(人工知能)が自動で推定する。

関門橋に取り付けたスマートネジ。トラス構造の桁と床組みをつなぐ床組み固定装置に固定している(出所:NejiLaw、IHI)
関門橋に取り付けたスマートネジ。トラス構造の桁と床組みをつなぐ床組み固定装置に固定している(出所:NejiLaw、IHI)
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 センサー機能を備えたネジは、NejiLawが開発した「smartNeji(スマートネジ)」だ。軸力センサーの役割を果たすボルトに、通信機能を搭載してデータをリアルタイムに送信する。

 システムの運用を始めたのは、2023年に開通から50年を迎える関門橋(山口県下関市、北九州市門司区)。本州と九州を隔てる関門海峡に架かる全長1068m、中央径間712mの吊り橋だ。

スマートネジを設置した関門橋(写真:NejiLaw)
スマートネジを設置した関門橋(写真:NejiLaw)
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 関門橋は、トラス構造の桁の上に床組みを載せた構造になっている。地震など水平方向に掛かる力で床組みが移動するのを防ぐ役割を果たすのが、床組み固定装置だ。下関側から主塔に至るまでの中央付近に6カ所設置されており、このうち1カ所の固定にスマートネジを使った。

 地震が起きると、この床組み固定装置が滑ることで摩擦力が生じ、橋梁にかかる水平力を吸収する。つまり、地震が起きた際に真っ先に動く部位で生じた力をスマートネジで計測することによって、橋にかかった力の大きさを推定できる。

 モニタリングシステムに搭載したAIが、ネジで計測した外力から部材の損傷度合いを推定する。地震や台風などの災害時に部材の損傷度合いがリアルタイムに分かれば、橋の通行規制の必要性を迅速かつ的確に判断できる。

 関門橋では、22年4月にスマートネジによるモニタリングを始めた。