国土交通省は、脱炭素に取り組む企業に対して総合評価落札方式の入札や工事成績評定でインセンティブを与える仕組みについて検討を始めた。2022年10月11日に有識者や建設業団体などでつくる懇談会を開き、試行工事の例や海外の動向を報告した。
国交省の推計によると、公共土木分野における全国の二酸化炭素(CO2)排出量は年間2500万tほどだ。同省が21年12月に公表した環境行動計画では、50年までのカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ、CN)の実現を見据えて様々な施策を示している。
CNに向けた取り組みの一つが、入札におけるインセンティブの付与だ。民間企業による脱炭素を促す効果が期待できる。
例えば、国交省中部地方整備局は21年度から「カーボンニュートラル対応試行工事」を始めた。入札参加企業がCO2の削減目標などを示して第三者機関の認定を取得している場合や、低炭素型の建機による施工実績を持つ場合に、「企業能力」の項目で加点する。また、脱炭素を進める方策を技術提案として求める。22年度は「42号熊野第2トンネル工事」など3工事で試行する。
自治体では、北海道が22年度から「北海道インフラゼロカーボン試行工事」に取り組んでいる。施工者は工事の着手前にCO2の削減策を記載した計画書を提出。その実施内容に応じて、工事完了後に成績評定の「社会性」の項目で加点を受ける。低燃費型の建機の使用や、現場内に設置したソーラーパネルによる電力の活用などが評価対象だ。
一方、懇談会の委員からは総合評価での加点に対して慎重さを求める意見も出た。国交省は今後、試行事例の分析などを踏まえ、こうした施策を全国的に導入する是非や方法について検討していく。