建設資材の価格高騰を踏まえた公共事業予算の増加に対し、財務省が難色を示している。国土交通省は2023年度予算の概算要求で、資材高騰に伴う必要経費について金額を定めない「事項要求」として計上。予算編成を具体化する過程で検討する方針を示していた。
一方、財務省は財政制度等審議会の歳出改革部会を22年10月19日に開き、資材価格はこれまでも継続的に上昇してきたと指摘。「事業の効率化によって対応するのが基本だ」とけん制した。
建設資材の価格は、資源の高騰や円安、ウクライナ情勢などの影響が相まって上昇している。例えば経済調査会が棒鋼やH形鋼、セメントといった主要資材の価格動向をまとめた「建設資材価格指数」は、20年8月から2年間にわたって毎月上昇した。
建設資材価格指数は、15年度の資材価格を基準値(100)としている。東京都など10都市を対象にした調査では、22年8月に1991年以降で最大となる148.1を記録した。
一方で、財務省は名目工事費を2015年度基準に換算する「建設工事デフレーター」の推移を根拠に、資材価格や労務費の上昇は以前から継続的に生じているものだと指摘。また、国交省が03年度から12年度にかけて実施した「公共事業コスト構造改善プログラム」などの実績を挙げ、事業の効率化を進めれば資材高騰に対応できるとの見方を示した。
背景には、国交省が取り組む建設業の生産性向上策の成果が具体的に示されていない点への不満があるとみられる。例えばインフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する施策では、20年度からの3年間で584億円を計上。BIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)やドローンの活用拡大などに予算を投じた。
財務省は一連の施策について「目標の達成状況や達成すべき指標が明確に示されていない」として、具体的なコスト削減効果などの検証を求めた。