日本財団と日本水路協会は2022年10月24日、日本全国の海岸に続く水深0~20mの「浅海域」を測量して海底地図をつくる「海の地図 PROJECT」を開始した。日本初の取り組みとなる。
全国的な航空測量を実施し、10年間で日本の総海岸線、約3万5000kmのうち約90%の海の地図を整備する計画だ。予算規模は10年間で200億円を予定している。
航空測量に用いる技術は「ALB(Airborne LiDAR Bathymetry)」と呼ばれるものだ。航空機に搭載した航空レーザー測深機を用いて測量する。2種類のレーザーを併用することで、陸地から海まで連続して地形を測量できる。
具体的には、陸地を「近赤外レーザー」で、海底を「緑レーザー」でそれぞれ計測する。近赤外レーザーは海面で反射し、緑レーザーは海底で反射する。その特性を生かして陸の高さと水深を測る。
日本水路協会の加藤茂理事長は、「レーザー光を使った航空測量によって、これまでなかった海底地形データを取得できる。非常に画期的なプロジェクトになる」と話す。
これまで浅海域の地形は、主に船から音波で測量されてきた。しかし船は浅瀬に入れないため、海岸線に近いエリアほど測量が難しかった。加えて、海岸線や港などは管理・所管する省庁や行政の体制が非常に複雑で、海底地形地図の作製は遅れていた。現在は日本の海岸線のうち2%弱しか、海底地形を把握できていない。それを日本財団と日本水路協会が航空測量で突破しようというわけだ。
日本財団の笹川陽平会長は「海の地図がないと水難事故や海の防災・減災、ブルーカーボン(海の生態系で吸収される炭素)、生態系の把握や保全、海洋ごみ問題など、さまざまな分野の対策や研究、技術向上が停滞してしまう」と危機感を募らせる。そこで日本財団と日本水路協会が手を組み、ALBという最新技術を用いたプロジェクトを立ち上げることにしたという。
水深0~20mの浅海域を測量のターゲットにしたことについても、笹川会長自らが説明した。「太陽の光が届く水深20mくらいまでに、魚のえさになるプランクトンなどが大量に生息している。このエリアの海底地形を詳しく知ることで漁業や海洋環境問題はもちろん、潮の流れや船の安全な航路、津波の発生メカニズムなど、我々の生活に直結する貴重な情報が数多く得られる」(笹川会長)
海に囲まれた日本は、世界で6番目に長い海岸線を有する。それだけ日本は、海底地図の恩恵を受けやすい国というわけだ。