全1753文字
PR
宮城・鳴子温泉郷付近で計画が進む(仮称)六角牧場風力発電事業の完成イメージ(出所:一般財団法人日本熊森協会)
宮城・鳴子温泉郷付近で計画が進む(仮称)六角牧場風力発電事業の完成イメージ(出所:一般財団法人日本熊森協会)
[画像のクリックで拡大表示]

 「自然景観への阻害要因となることや、風車建設に伴う森林伐採など、防災対策への重大な影響が懸念され、現行計画に対して反対を表明する」

 宮城県大崎市の伊藤康志市長は2022年12月1日に会見を開き、同市鳴子温泉郷付近で進められている風力発電計画「(仮称)六角牧場風力発電事業」への反対を表明した。事業者は環境影響評価(アセスメント)の手続きで23年1月17日まで同準備書を公開し、意見を受け付けている。

 同計画は大崎市と同県栗原市にまたがって存在する東北大学川渡(かわたび)フィールドセンター内にある「六角牧場」と呼ばれる場所に、高さ最大200メートルの風車を17基設置して最大5万キロワット発電するという計画だ。

 しかし、地元住民や自治体などからは(1)風車などの施設建設により災害誘発の危険性がある(2)鳴子温泉は環境省の国民保養温泉地に指定されており、景観にもそぐわない(3)建設地周辺は渡り鳥の飛来ルートと重なり、ラムサール条約に登録されている湿地もある──などとして「理解が得られていないため、計画は中止すべきだ」との意見が根強い。

 それに加えて一部メディアでは、11年の東京電力福島第1原子力発電所事故以降、同牧場地が除染されない状態で発電事業に貸し付けされていたとも報道されており、その影響が問題視されている。

 前出の伊藤市長は12月6日に宮城県庁を訪れ、村井嘉浩知事に「県としても計画の反対をお願いする」などと求める要望書を手渡した。村井知事は「重く受け止める」として環境アセスを所管する経済産業相へその旨を伝えるとしており、反対運動は熱を帯びている。

 一方、計画の事業者である川渡風力発電(札幌市)側は反対意見に異を唱える。同社は風力発電事業などを手がける市民風力発電(札幌市)や関連会社のCSS(同)が出資する事業目的会社だ。このうち、CSSの担当者が取材に応じた。