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 文部科学省は、2014年に定めた技術士の資質能力(コンピテンシー)の規定を初めて改定する。「継続研さん」の項目を追加するほか、SDGs(持続可能な開発目標)への対応や情報技術(IT)の活用などを促す文言を盛り込む。23年1月25日に開いた科学技術・学術審議会技術士分科会の会合で改定案を示し、大筋で承認された。

技術士の資格の国際標準への対応を図る(出所:文部科学省)
技術士の資格の国際標準への対応を図る(出所:文部科学省)
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 コンピテンシーとは、技術士が最低限持つべき能力を具体的に取り決めたものだ。当初は専門的学識、問題解決、マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ、技術者倫理――の7項目を規定した。そこへ新たに継続研さんを加え、継続教育(CPD)によってコンピテンシーの維持・向上を図るよう明記。さらにデータやIT、新技術などを活用し、社会の変化に対する適応力を高めるよう求める。

 コンピテンシーは、技術士第二次試験の筆記試験や口頭試験で受験者を評価する指針となっている。ただし、今回の改定で出題内容が大きく変わることはないとみられる。継続研さんは、すでに口頭試験の試問事項として100点中20点を配分しているからだ。一方、新技術の活用に関する能力などについては、第二次試験で確認する方法を技術士分科会で議論する。

 一連の見直しは、技術者の資格に関する国際的な枠組みの変更に対応するためだ。コンピテンシーはもともと、国際エンジニアリング連合(IEA)が定めた技術者の資質能力基準(GA&PC)に基づいて作成した。IEAは21年にGA&PCを改定し、SDGsの実現や多様性の確保といった社会課題を解決する能力の必要性を明示。新技術やイノベーションへの積極的な対応などを盛り込んだ。

 IEAは日本など加盟国に対して、自国の技術者制度を新たなGA&PCに対応させるロードマップを24年6月までに提出するよう求めている。技術士の資格が海外で正当に評価されるように、コンピテンシーの国際標準化を図る。