JR西日本は2023年2月28日、山陽新幹線について高架橋柱の耐震補強など地震対策を全線に拡大すると発表した。52年度までの完了を目指して約3000億円を投じる。高架橋柱のうち国土交通省から前倒し要請を受けた優先度の高いラーメン橋台の対策は25年度までに終える。
鉄筋コンクリート造の高架橋柱は、地震時の壊れ方の違いから、せん断破壊先行型と曲げ破壊先行型に分けられる。地震対策では、被害が大きく復旧に時間がかかるせん断破壊の防止に重点を置いてきた。同社は1995年の阪神大震災を受け、せん断破壊先行型の耐震補強を実施。2010年度までにほぼ完了した。
その後、11年の東日本大震災を受け、曲げ破壊先行型の耐震補強に着手。従来の補強計画では、地震の発生確率が高いエリアを中心に約2500本の柱を対象とした。現在、その約8割で対策が完了している。今回打ち出した計画で、補強の対象を曲げ破壊先行型の全ての柱約9000本に拡大した。
曲げ破壊先行型であっても、せん断破壊が起こる可能性はある。22年3月の福島県沖地震では、東北新幹線の福島─白石蔵王間にあるラーメン橋台で、曲げ破壊先行型の柱に「曲げ降伏後のせん断破壊」が発生し、約40cm沈下した。この橋台は県道上に架かるプレストレストコンクリート(PC)桁を支えており、強い鉛直荷重がかかっていた。そのため、曲げ降伏だけで済まず、せん断破壊につながったとみられる。
これを受け国交省は22年12月、重い桁荷重を支えるラーメン橋台について、25年度までに前倒しで耐震補強するようJR各社に要請した。JR西日本はこれに応じ、対象となる約170本の補強を25年度までに終える。それ以外のラーメン橋台の柱も27年度までに全て補強する。