京都大学発のスタートアップで生物調査用のスマートフォンアプリを展開するバイオーム(京都市)は、民間企業などの「自然情報開示」を支援するサービスを開発した。事業活動に由来する自然への影響を民間企業などが開示する国際的枠組み「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の開示指標に対応する予定だ。2023年2月28日にサービスの提供を開始した。
同社はこれまで、スマホを使って動植物を撮影するだけでAI(人工知能)が種名を特定し、位置情報とともにデータベース化するアプリ「Biome(バイオーム)」を開発・提供してきた。アプリは一般ユーザーを対象に基本無料で、23年2月末時点のダウンロード数が70万を超える。
新サービスは、生物の生息状況を地図上にフィルタリングして表示するパソコンアプリ「BiomeViewer (バイオームビューア)」と、既存アプリ、バイオームの機能を拡充したスマホアプリ「BiomeSurvey(バイオームサーベイ)」の2つのアプリで提供する。民間企業を対象として有料化した。バイオームビューアでは別途、魚類や鳥類といった大きな分類でしかフィルタリング機能できない無料版も、一般向けに公開した。
サービスを導入する企業に対しては、バイオームがまず、バイオームビューアのフィルタリング機能により指標種を選択し、現在と将来予測のそれぞれの分布図を作製。2つの図を重ね合わせて、導入企業が事業エリアで生物多様性の保全に注力すべき箇所を判断できる情報を提供する。導入企業はそのエリアに対して、バイオームサーベイで既存アプリ同様に種別を判別する他、個体数など詳細な情報を収集する。
「専門業者に外注せずとも、社内で本格的に調査できる。外注と比べて約8割のコスト削減効果が見込める」とバイオームの多賀洋輝取締役兼COO(最高執行責任者)は話す。