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 大林組は、地下空間を活用する次世代道路構想「ダイバーストリート」の実物大モックアップを構築し、施工性や性能、工期短縮の効果を確認した。従来工法では仮設で使っていた鋼矢板を、本設利用して地下空間を構築することで全体工期を約18%短縮できた。モックアップは同社技術研究所(東京都清瀬市)内の実証フィールドに構築した。

 プレキャストコンクリート(PCa)ボックスカルバートを使った従来工法で地下空間を構築する場合、鋼矢板は仮設の土留め壁として打設。掘削してPCaボックスカルバートを設置した後で引き抜く。一方、ダイバーストリートで導入する工法では、鋼矢板を側壁として本設の支持構造物に使う。鋼矢板の引き抜き工事や側壁の躯体(くたい)工事が不要となる。上部にはPCa床版などを架設する。

「ダイバーストリート」の実物大モックアップの施工で鋼矢板を圧入しているところ(写真:大林組)
「ダイバーストリート」の実物大モックアップの施工で鋼矢板を圧入しているところ(写真:大林組)
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「ダイバーストリート」の実物大モックアップで床版の設置が完了したところ(写真:大林組)
「ダイバーストリート」の実物大モックアップで床版の設置が完了したところ(写真:大林組)
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 実物大モックアップの施工では、打設した鋼矢板に鋼板をボルト接合し、その上にレベル調整板と「ソールスポンジ」と呼ぶクッション性の高い型枠材を設置した。それにより、最大3cm生じていた鋼矢板同士の天端高さのずれを吸収し、PCa床版の設置精度を高めた。ソールスポンジに囲まれたスペースに無収縮モルタルを充填することで、鋼板とPCa床版を短時間で一体化できた。

「ダイバーストリート」の施工手順(出所:大林組)
「ダイバーストリート」の施工手順(出所:大林組)
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 鋼矢板の建て込みに当たっては、施工場所の深部が硬質地盤だったためクラッシュパイラーで先行掘削した。本設利用することから、鋼矢板には支持力確保と沈下抑制対策の目的で根固め注入を施した。施工後に車両重量約20tのダンプトラックによる走行試験を実施したところ、鋼矢板の沈下量は0.1mm以下にとどまった。

「ダイバーストリート」の実物大モックアップを施工後、車両走行試験を実施した(写真:大林組)
「ダイバーストリート」の実物大モックアップを施工後、車両走行試験を実施した(写真:大林組)
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