鹿児島県内を走るJR指宿枕崎線の高架橋で東レの樹脂製防護壁の表面が剥落したのは、防護壁の製造過程に問題があったことが原因と判明した。JR九州は剥落箇所周辺で2022年12月から、不具合の恐れがある防護壁1871枚の交換作業を進めている。
防護壁はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製で、列車走行時の飛散物の防止や防音を目的に高架橋の高欄部に設置する。製品1枚の基本寸法は高さ約1.9m、幅約2m。重さは約150kgある。JR指宿枕崎線谷山―慈眼寺間の高架化事業に伴い、13~16年に設置した。
剥落が判明したのは21年5月27日。高架橋の約6m下の遊歩道に樹脂片が落ちているのを通行人が見つけた。樹脂片は約30枚あり、重さは合計で約157g。大きさは最大で縦9cm、横6cm、厚さ0.5cmだった。けが人はいなかった。
JR九州は東レ製の防護壁を鹿児島、福岡、大分、佐賀の4県の高架橋で採用している。このうちひび割れなど不具合が生じている箇所で、養生テープやネットによる応急的な飛散防止措置を施した。
東レと原因を調べたところ、特定の海外工場で一時期、防護壁の製造プロセスに不備があったと判明した。表面の仕上げ工程で、樹脂にガラス繊維を混ぜないまま硬化処理を施した箇所があった。東レは、ガラス繊維を含む内部構造体と含まない表面部分との間で熱膨張率の差によるゆがみが生じ、経年でひび割れが発生したとみている。
谷山駅周辺に設置した東レ製の防護壁は2424枚。このうち不具合の恐れがある約8割の製品を全て交換する予定だ。列車の運転席から見通しのよい箇所では、列車が通過しないタイミングに地上からクレーンを使って取り換える。クレーンが使えない場所などでは鉄道を運行しない夜間に作業を進める。現時点で完了時期は未定だ。
新たな防護壁や交換作業の費用は全て東レが負担する。鹿児島以外の3県で不具合の恐れがある製品については今後、交換や補修を進める。