群馬県桐生市の水道工事で2023年3月7日、作業員4人が一酸化炭素(CO)中毒で死傷した。換気設備を使用せず地下空間でエンジン式発電機を使用したため、不完全燃焼を起こしたとみられる。現場には、必要な資格者を配置していなかった。
事故があったのは、桐生市広沢町の広沢配水池につながる配水管を、開削工法で新しい管に交換する工事の現場だ。工期は2022年7月~23年3月、工事費6369万円。キンケン(桐生市)が元請けとなり、1次下請けに飛翔興業(群馬県太田市)、2次下請けに赤城林業(同渋川市)が入っていた。
作業員がCO中毒になったのは、配水池近くの水道管に取り付けた緊急遮断弁を維持管理するための「弁室」だ。コンクリートの壁で囲まれた面積約6m2、高さ約5mの地下空間で、天井にあるマンホール蓋を開閉して出入りする。
弁室内で、水道管を支える架台の設置作業中に、ハンマードリルを使うため発電機を稼働させた。
稼働を始めてから数分たつと弁室内で作業中の2人に加え、救出するため弁室内に入った2人の計4人が相次いで体調不良を訴えた。このうち、弁室内で作業していた1人が死亡した。送風機による換気をしていなかっただけでなく、酸素計測装置の携帯も怠っていた。
発注者の桐生市は受注者に対し、CO中毒の恐れがある現場の安全管理について監督する「酸素欠乏危険作業主任者」の配置を施工条件として明示していた。受注者が提出した作業員名簿には、その資格者が記載されていた。
たが事故当日、その資格者は不在だった。元請けのキンケンが日経クロステックの取材に応じないので、詳細な理由は不明だ。