京都府福知山市のコンクリートメーカーが、水セメント比を偽って製品を出荷していたことが分かった。このコンクリートを使用した由良川の堤防で、水路などの強度不足の恐れが生じている。所管する国土交通省福知山河川国道事務所が2023年3月8日に発表した。強度や安全性について調査を進めている。
同事務所によると、畿北アサノコンクリート工業(以下、畿北アサノ)が21年10月~22年12月に納品したコンクリートで不正があった。水セメント比を無筋コンクリートで63%、鉄筋コンクリートでは59%としながら、それぞれ60%以下、55%以下とする仕様を守ったと偽っていた。
23年2月下旬、府に届いた封書による通報がきっかけで発覚した。同社の代理人を務める浜本光浩弁護士は23年3月24日、不正を働いた理由や経緯について、「現時点では不確かで答えられない」と述べた。
水増ししたコンクリートは、土木工事では福知山河川国道事務所発注の3件と京都府発注の1件に使っていたことが分かっている。不正発覚時に完成していた工事と工期の途中だった工事が2件ずつだ。
同事務所が発注したのは、いずれも福知山市内の由良川前田地区の堤防(工期22年3月~23年3月、工事費約2億4000万円)と高水護岸(21年3月~22年2月、約1億3000万円)、公庄(ぐじょう)地区の堤防(21年6月~22年3月、約1億8000万円)。使用箇所は堤防に付属する水路などだった。全て畿北アサノの筆頭株主の西田工業(福知山市)が施工した。
京都府の発注案件は、由良川水系大谷川支川の砂防工事だ。この案件も福知山市内に現場がある。工期は22年4月~23年3月、工事費は約1億3000万円で施工者はヨネダ(福知山市)だ。この工事と由良川前田地区の堤防工事は水セメント比の不正の発覚時に未了だったため、工期延長が必至となっている。
建築への使用も判明
水セメント比を偽ったコンクリートは建築工事にも使われていたことが分かった。国交省近畿地方整備局建築安全課が23年3月16日に発表した。対象工事などは調査中だ。
西田工業は建築工事も手掛けている。23年3月20日時点で、戸建て住宅1棟の基礎に問題のコンクリートを使っていたことを把握しているという。