リニア中央新幹線の大深度地下トンネル工事で2023年3月27日、2台のシールド機が稼働を始めた。東京都内の北品川工区では、本掘進に入る前に地上への影響や工程を検証する「調査掘進」の再開に向けた試掘を、神奈川県内の梶ケ谷工区では調査掘進を開始した。同県内の東百合丘工区でも、23年3月31日までに調査掘進の着手を予定している。
北品川工区では、深さ約83mのたて坑「北品川非常口」から泥土圧シールド工法で南北両方向に掘り進める。施工者は熊谷組・大豊建設・徳倉建設JV。21年10月に南へ調査掘進を開始したが、4カ月後にマシントラブルが起こり約50m掘進した地点で停止した。
点検の結果、カッターヘッド中心部前面にある添加材の吐出口に注入管を固定するゴムシールが破損し、注入設備が機能していないことが分かった。掘進速度を上げた際に、手動での添加材の増量が不足し、掘削土が吐出口周辺に付着して摩擦熱が発生。高温となったゴムシールに添加材の注入圧が加わって破損したとみられる。
シールド機内部から高圧噴射ノズルをカッターヘッド前面に伸ばせるようにして、付着した土を取り除いた。また、掘進速度に合わせて添加材の注入量を自動調節する機械を搭載。注入設備の修繕と改修は、23年2月までに完了した。
JR東海の広報担当者は、「カッターヘッドに土が付着しても、迅速に対応できるようになった。自動調節機械を搭載したことで、注入設備の故障を招いた問題も解決済みだ」と説明する。
他の工区では、北品川工区でのトラブルを受け、掘進開始直後から自動調節機械を使用できるようにする。たて坑の外に置いた自動調節機械から、添加材を送る管を延ばして坑内のシールド機に接続する。
北品川工区では試掘の検証結果を踏まえ、23年6月ごろまでに調査掘進を再開する予定だ。本掘進の開始時期は未定。