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 北海道新幹線のトンネル工事で、熊谷組などのJVがコンクリートの品質試験について虚偽報告していたことが分かった。単位水量試験とスランプ試験を所定の頻度で実施したかのように装っていた。発注者の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)と熊谷組が、それぞれ2023年5月2日に発表した。

北海道新幹線の羊蹄トンネル有島工区の内部(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
北海道新幹線の羊蹄トンネル有島工区の内部(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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 不正があったのは、北海道新幹線の札幌延伸に向けて工事を進めている羊蹄トンネルの有島工区(北海道ニセコ町)だ。延長約9.8kmの同トンネルのうち、新函館北斗側の延長約4.2kmを熊谷組・不動テトラ・宮坂建設工業・橋本川島コーポレーションJVが施工している。

 工期は19年2月~25年3月で、契約金額は約250億円。シールド機で掘削しながら、セグメントの代わりに場所打ちコンクリートで覆工するSENS(センス)工法を採用した。

羊蹄トンネルの位置図(出所:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
羊蹄トンネルの位置図(出所:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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 鉄道・運輸機構の監督員が23年4月20日、現場に立ち会った際に不正を見つけた。本来、品質試験を実施するタイミングなのに、その段取りができていなかったからだ。不審に思った監督員が施工者に問いただしたところ、不正を認めた。そこで機構は、熊谷組JVに事実関係を調査するよう指示。4月24日に調査結果の報告を受けた。

 報告によると、22年10月22日に下部コンクリートの単位水量試験で不正が始まった。現場ではコンクリートの打設前に1回、打設開始後は50m3ごとに1回、単位水量試験を実施することになっている。しかし、熊谷組JVは打設前の1回しか試験していないのに、所定の頻度で実施したと虚偽の報告をしていた。

 23年4月17日からは2次覆工コンクリートで、単位水量試験に加えてスランプ試験でも不正を開始。トンネル1ブロックにつき3カ所で実施するスランプ試験を、1カ所だけで済ませていた。

試験で不正のあったコンクリートの打設箇所(出所:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
試験で不正のあったコンクリートの打設箇所(出所:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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