北海道横断自動車道工事の用地取得を巡る問題で、国土交通省北海道開発局釧路道路事務所が道路用地の地権者に約9150万円を不正に利益供与したことが分かった。同事務所の複数の職員が関与し、道路工事費の水増しで費用を捻出していた。
不正があったのは、2024年度に開通予定の北海道横断自動車道阿寒インターチェンジ(IC)―釧路西IC間の工事。補償が足りないと主張する地権者が22年8月5日、国などを相手取った民事調停を釧路簡易裁判所に申し立てたことで発覚した。
北海道開発局は22年12月、第三者による調査委員会を設置。調査委員会が23年5月10日に公表した報告書によると、釧路道路事務所は17年度から19年度にかけて、地権者に不正な利益供与をしていた。
北海道開発局では用地を買収する際、住宅や畜舎など建物の移転に伴う費用や、用地取得の対象にならなかった残地の造成費用を補償金として支払う。通常は地権者が補償金などを基に自ら造成工事などを実施する。
用地取得に伴う地権者への補償は金銭が原則だ。ただ、地権者が金銭以外による補償を求めた場合は例外となる。その要求に相応の理由があり、やむを得ないものならば、道路法などに基づく手続きを経た上で、工事などの「現物補償」が認められる。
釧路道路事務所の職員は、そのルールを知らず、正式な手続きを経ないで現物補償を実施していた。現物補償を認めるかどうかは、担当する職員の判断に委ねられていた。