兵庫県伊丹市を流れる天神川で2023年5月8日未明、前日から降り続いた大雨による影響で堤防が決壊した。堤防の補強工事のために河道の幅をほぼ半分に狭めていたため、急な水位上昇が起こったことが原因だとみられる。県は23年6月上旬に検証委員会を開くなどして原因解明を急ぐ。
天神川は、川底が周囲の土地よりも高い「天井川」だ。堤防の決壊で泥水が住宅地に流れ込み、10棟が床下浸水、2棟が床上浸水した。
県は堤防の補強と併せて、川の下を通る市道荒巻トンネルの拡幅工事も進めている。宇都宮建設(兵庫県宝塚市)が22年3月~23年7月の工期で施工している。
川が氾濫した当時、左岸側をドライにするため高さ約2mの土のうで仮締め切りしていた。そのうえで、左岸の堤防を一部掘削し、護岸を撤去した状態にしていた。
大雨に伴う増水で土のうが崩れ、一部掘削していた堤防が延長約30mにわたって決壊した。幅14mの河道を半分程度に狭めていたため、水位のせき上げが生じたとみられる。
兵庫県河川整備課の平塚康嗣河川・武庫川整備班長は、「越水によって土のうが崩れたのか、設置方法に問題があって先に土のうが崩れたのかはまだ不明だ。決壊の原因について慎重に調査している」と話す。
施工者が必要な対策を講じていたかどうかも調査する。例えば、国土交通省の「仮締切堤設置基準(案)」では、仮締め切りを設置した状態でも、現況の流下能力を確保するよう規定。流下能力が不足する箇所では河道掘削などが必要だとしている。