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Lightningポートをなくしたい別の理由

 2015年12月にカリフォルニア州サンバーナーディーノで起こった銃乱射事件では容疑者がiPhoneを所有。アップルは米連邦捜査局(FBI)からパスコードを回避するソフトの提供を求められたが、拒否した。

 その後、FBIはアップルへの要求を撤回し、容疑者のiPhoneから情報を取り出すことに成功したとされる。同事件を含め、捜査当局によるiPhoneのハッキングに使われたとみられるのが、Lightningポートを介してハッキングソフトがUSBケーブルでアクセスする手法だという。

 そこでアップルは6月13日、USB経由のあらゆるデータアクセスを禁じる機能をiOSのバージョンアップで提供することを明らかにした。

 具体的には、最後のロック解除から1時間を経過したデバイスについては、USBケーブルを介したアクセスを許可しない「USB制限モード」を組み込むという。これにより、パスコードを知らない捜査当局がiPhoneの中身を自由に見られる状況を回避する。

 もっとも、全てのiPhoneが最新バージョンで動作しているわけではない。いくらソフトで制限しても物理的に接続できる状況は変わらず、端末内のデータにアクセスする新たな手法が出てくる可能性もある。アップルはプライバシーとセキュリティの観点でも、将来のiPhoneからLightningポートを取り除きたいと考える十分な動機があることが、今回の一件から明らかとなってきた。

2018年は充電の改善が優先課題

 とはいえ、2018年は充電の改善が優先的に取り組むべき課題に見える。前述した通り、現状のワイヤレス充電は最大7.5Wである。付属の充電器(5W)より充電が少し速い程度であり、いずれも満足なスピードとは言えない。

 2018年のiPhone新版は、iPhone Xの5.8インチモデルに加え、6.1インチ、6.5インチと画面サイズがさらに大きくなることが予測される。スマートフォンは設計上、画面サイズが大きくなるほど搭載バッテリーを増やせる半面、より多くの電力が必要になる。

 充電速度を改善しないままの大画面化は、スマートフォンの体験を著しく損なう恐れがある。ワイヤレス充電はケーブルの抜き差しが必要なく、複数デバイスの同時充電を実現できれば非常に魅力的なソリューションとなる。アップルはこの状況を技術的にどう解決していくのか。引き続き注目したい。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) 1980年生まれ。米カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『ソーシャルラーニング入門』(日経BP社)など。