PR

中間選挙を控えた想定シナリオ

 iPhoneの扱いという観点では、中国側に優位性がある。例えば、関税で米国のiPhoneが値上げとなった場合、「米国だけ高い」と消費者から反感を買うことになる。新型iPhoneの発売は例年9月下旬。11月に中間選挙を控えるトランプ政権にとっては、iPhoneに関税を適用すれば、選挙直前に政権への批判が高まることになる。よほどのことがない限り、避けたいと考えるはずだ。物事が定石通りに進むとは限らないが、一定の歯止めとなるのではないか。

 中国側には他にもカード(切り札)がある。iPhoneで用いているパーツに関税をかければ容易に価格をつり上げられる。アップルは韓国から有機ELディスプレー、日本から液晶ディスプレーや様々なコンポーネントを調達し、中国に集めている。

 さらにGorilla Glassは米コーニング(Corning)製、顔認証を実現するTrueDepthカメラの部品も米フィニサー(Finisar)製である。アップルはこれらの企業に対しても先端製造業ファンドを通じて投資しており、トランプ政権の米国製造業振興と雇用創出の意向に沿う点を強調してきた。

 中国はパーツに対する関税だけでなく、製造や出荷に対する圧力もかけられる。iPhoneを製造・出荷できない状況を作り出し、トランプ政権の姿勢に批判が集まるよう仕向けて、貿易戦争の終息を狙うこともできよう。11月の中間選挙と新型iPhoneの需要が高まるホリデーシーズンを控え、アップルを交えた激しい攻防が展開されることが予想される。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) 1980年生まれ。米カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『ソーシャルラーニング入門』(日経BP社)など。