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独自チップがウエアラブルで真価を発揮

 アップルはW1を独自に作り上げて搭載した結果、AirPodsで2年のアドバンテージを得られた。独自設計のチップは、現在のアップル製品において非常に重要な役割を果たしている。

 iPhoneが搭載するAシリーズのチップは、低消費電力と高パフォーマンスの両立を実現した。特に「A11 Bionic」を搭載したiPhone 8は、2018年になっても多くのAndroidスマートフォンより高いパフォーマンスを発揮している。

 さらにMacに搭載した「T2チップ」により、Intelチップ依存で差異化要素を欠いていたPC市場において「セキュリティー」という新たな価値を提供することに成功した。高圧縮のビデオエンコーディングにも対応し、今後もこうした価値を拡大していく戦略を採るだろう。

 そして、独自チップが最も効果を発揮するのがウエアラブルデバイスである。AirPodsのW1チップはここまで説明してきた通り。次期製品では上位モデルにおけるノイズキャンセリング、より長いバッテリー持続時間、「Hey Siri」機能への対応、生体センサーの埋め込みなど様々な期待が高まる。

 Apple Watchでは、デュアルコアで世代が上がるごとに2倍の高速化を実現しているSシリーズのチップ、BluetoothやWi-Fiの接続性を高めたW3チップを搭載する。バッテリー寿命の向上をはじめ、心電図計測や転倒検出など新たな進化をもたらしている。

 小型化とバッテリー寿命の要求が厳しいウエアラブルデバイスには独自開発のチップが不可欠──。アップルの判断は、控えめに見ても今のところ大成功を収めている。当面、ウエアラブル分野における同社の優位性は揺らぎそうにない。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) 1980年生まれ。米カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『ソーシャルラーニング入門』(日経BP社)など。