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 最近よく話題になるが、日本はこの30年にわたって賃金水準が上がっていない。1990年と2020年を比べると実質的に4%増でしかないというから深刻だ。ちなみに、主に先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の平均は33%増なので、日本のポンコツぶりが際立ってしまう。この30年はまさに「働く人が豊かになり損ねた30年」と言ってよい。

 そこそこ豊かという生ぬるい環境に誰もが安住できるなら、それもまあよしなんだろうが、日本の場合は格差が固定し、その格差が広がりつつある。分厚かった中間層が解体しつつあり、貧困層が増えつつあるわけだ。こんなことでは、たとえデジタルで一山当てて大金持ちになる人が多少出てきても、本人以外はうれしくも何ともない。現政権が「成長と分配の好循環を目指す新しい資本主義」を唱え出したのも、当然と言えば当然だろうね。

 何でこんなトホホな事態になってしまったのか。いろんな説が語られている。例えば「非正規雇用が増えたから」「デフレが続き企業が賃上げに慎重だったから」といった具合だ。さらに「そもそも日本の生産性が低すぎる」という議論もある。企業が付加価値を生み出す力、つまり、もうける力に乏しく賃金などの人件費に回すお金がなかった、というわけだ。いずれにせよ、それぞれの要因はみんなつながっているから、それらの複合要因によって我々は30年間も豊かになり損ねたのであろう。

 さて、ここまでは世間でよく言われていることを書き並べたにすぎない。なので、極言暴論風に言い換えることにしよう。まず、日本企業の大半が大もうけできる製品サービスや方法を開発できなかったことが、働く人が豊かになり損ねた第一の原因だ。既存の事業でいえば、30年前に既に合理化、効率化が完了した製造業の生産現場を除けば、無駄に人を使って非効率な業務を続けてきてしまった。これで給料が上がれば奇跡である。

 で、ここからが本題だが、この「極言暴論」でおなじみの我らがIT業界は、賃金水準が上がらず働く人が豊かになり損ねた日本の大問題を象徴的に示す存在といえる。何せ、1995年のインターネットの爆発的な普及から始まったデジタル革命の波に乗ろうとしないどころか、世界と戦おうとした「栄光の」コンピューターメーカーも含めITベンダーは非効率な人月商売へと落ちぶれてしまったのだからな。しかも、彼らがつくり出すシステムによって、日本企業の非効率な業務を長年にわたり固定してしまったという「罪」もある。

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 他の先進国や新興国では、クラウドなどを活用するITベンダーが大もうけできる、あるいは大もうけできると期待できるビジネスをつくり出してきた。そして既存企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)を促したり、ディスラプション(破壊)したりすることを通じて、産業全体の高度化や新陳代謝を進めた。働く人は失業のリスクを背負いながらも、リスキリング(学び直し)により高いサラリーを得る機会も持てたわけだ。なのに日本では、非近代的な人月商売に退行したITベンダーが主流を占め続けた。もう目まいがしそうである。