全6103文字
PR

 日本を代表するような大手製造業では、最近まで経営会議でIT戦略に関して議論したことがない。最近、そんな事実を知って「えっ、まさか!」と驚いていた人がいたので、「別にその企業に限った話ではなく、日本の製造業だと大手でもそんなのは当たり前だよ」と教えてあげたら、さらに驚いていた。この件はあまり知られていないようだ。実は、日本企業においてIT活用が最も遅れているのは製造業なのだ。

 実際に私も以前、日本を代表する別の大手製造業のCIO(最高情報責任者)だった人が「経営戦略や事業戦略にIT戦略を適合させるために、経営会議での議論をしっかりと聞いていることが重要」と話すのを聞いたことがある。すごいのは、このCIOは役員として経営会議に参加しても、議論に参加していないという事実だ。つまりIT戦略を経営会議で議論していないのだ。確かにそれならCIOはお地蔵さん(座っているだけの人)を決め込めるが、経営会議での議題にならない「IT戦略」とは一体何なのだと思ったぞ。

 こんな話を聞くと、同じように「えっ、まさか!」と驚く人は多いだろうが、少し冷静に周りを見渡して考えてみてほしい。IT活用を経営戦略の中核に据えているという企業、いわゆる「IT活用先進企業」などと呼ばれている企業の名を挙げてみるとよいだろう。ファーストリテイリング、ワークマン、ヤマトホールディングスなどといった具合に、製造業以外の企業名はすらすら出てくると思うが、製造業だといきなり難しくなる。「えーっと、コマツが有名だったが……」となるはずだ。

 この「極言暴論」ではよく「劣化したIT部門」とか「素人集団と化したIT部門」といった言い方をしているが、その際に私が思い浮かべているのは製造業のIT部門だ。老朽化した基幹系システムのお守りをするのが精いっぱいで、場合によってはそのお守りですらITベンダーの常駐技術者に丸投げしている。製造業には、そんな情けないIT部門がごろごろ存在する。だから、大手であっても「経営会議でIT戦略に関して議論したことがない」というのは、そう驚く話ではない。

 もっとも、この話には「最近まで」という条件が付く。何せ今はデジタル革命の時代だ。製造業をはじめあらゆる業種の日本企業で、経営者が「我が社もDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進せよ」などと騒いでいる。なので、他の業種に比べてIT活用で後れを取った製造業であっても、最近ではさすがに経営会議でDX戦略やIT活用などを議題にしたことはあるはずだ。

 ただなぁ、経営会議でDX戦略やIT活用などを議論したところで、昔とあんまり変わらない企業が多いんだよね。例えば経営会議でDXを推進すると決定しても、後は「具体的な取り組みは現場の創意工夫で」といった現場丸投げになる。要は製造業のくだらないカイゼン活動と変わらない。中には、IT部門とは別に新たにDX推進組織を立ち上げるなど「先進企業」っぽい大手製造業もあるが、新組織で何をやるのかと役員に聞くと「実は何をしてよいか分からない」と返ってくる。そんなレベルなのだ。