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 基幹系システムの刷新プロジェクトは失敗したほうがよいのかもしれない――。こう書くと、この「極言暴論」が大嫌いにもかかわらず、なぜか毎回熱心に読んでくれる一群の読者から「いよいよネタに困ったらしく、木村が妙なことを言い出したぞ」と嘲笑されそうだ。だが、決して妙なことではないぞ。リアルな現実を踏まえた結論である。

 この10年ほど、様々な日本企業の経営者やCIO(最高情報責任者)に話を聞く機会があった。その中で、完遂したはずの基幹系システムの刷新について反省や後悔の弁を述べる人が結構いたのだ。面白い(本当は面白くないが)ことに、その内容は驚くほど似通っていた。恐らく極言暴論の熱心な読者なら想像がつくと思うが、いかがか。

 例えば基幹系システムにERP(統合基幹業務システム)を導入した大手製造業の経営者は、「うちの業務のやり方にソフトウエアを合わせてしまった。もっと現場の業務を整流化(=標準化、パターン化)して導入すべきだった」と悔やんでいた。この企業はIT活用の先進企業と見なされていたが、経営者から言わせれば「先進企業と呼ばれるには値しない」とのことだった。

 つい最近でも、ある大企業のCIOが次のような話をしていた。「基幹系刷新に当たって、利用部門の要求を可能な限り反映してシステムを再構築してしまった。『その業務、そのサービスは本当に必要か』から詰めるべきだった」。ほら、この反省の弁は製造業の経営者の後悔と本質的に何も変わらない。両者とも「業務改革なき基幹系システム刷新」を自社でやらかしてしまったことを嘆いているのだ。

 その他にも複数の経営者、複数のCIOから似たような話を聞いた。なぜ反省や後悔の弁を語ったのかと言うと、システム刷新後の保守運用で湯水のごとくお金を使ってしまったからだ。業務改革なき基幹系システム刷新をやらかした企業の大半では、開発費は当初予算の2倍、3倍に膨らみ、納期もベタ遅れになる。先ほどの製造業と同じく基幹系刷新でERPを導入した別の製造業の経営者も「ERPのために稼いでいるようなものだ」と嘆いていた。

 こうした嘆きを世間では「後の祭り」と言う。ただ後の祭りとはいえ、こうした反省や後悔の弁を経営者らが語るようになったのだから、昔と比べると日本企業も少しはましになったのかもしれない。以前ならこんな状態になっても、対外的には「基幹系システムの刷新で業務改革に成功」などと強弁していたからな。さて、冒頭で「基幹系システムの刷新プロジェクトは失敗したほうがよい」と書いた理由は、もはやお分かりだろう。