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 米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の創業者であるジェフ・ベゾス氏がCEO(最高経営責任者)を退任するとのことで、ここ数日のIT業界はその話題で持ちきりだ。そのおかげで、アマゾンの有名なモットーを思い出せた。これはとてもラッキーだ。なぜかと言うと、「極言暴論」の主要テーマとまさにドンピシャだからだ。

 そのモットーとはベゾス氏がよく口にするという「Good intention doesn’t work, only mechanism works!」だ。和訳すれば「善意(良い意図)は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」といったところか。「アマゾンの社風は軍隊的だ」などと言う人からすると、まさにそれを象徴する言葉として受け取られているようだが、私から言わせれば素晴らしい言葉である。

 あっ、何もアマゾンのEC(電子商取引)サイトの「仕組み」が素晴らしいと称賛しているわけではないぞ。だから、その方向からのつっこみはお断りしたい。私はその「考え方」が100%正しいと評価しているだけである。というか、称賛したり評価したりするほどの話でもないのかもしれない。むしろ当たり前のことであろう。アマゾンだけでなく、全ての米国企業、いや世界中の企業がそれぞれの「仕組み」によって、自らの事業を運営しているわけだから。

 だが世界は広いもので、「善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」という正論が全く当てはまらない企業の一群が存在する。もうお気づきであろう。というか、極言暴論の熱心な読者なら、今回のテーマについても察しがついたに違いない。そうなのだ。企業であるにもかかわらず、まともな経営の仕組みを持たない日本企業である。

 日本企業の場合、経営の仕組みをおろそかにして、従業員の「善意」に頼る。その善意とは何かと言えば、顧客へのおもてなしの心であったり、現場での自主的な創意工夫だったりする。つまり、この極言暴論で何度か問題にしている「我が社の強みは現場力」の「現場力」である。もちろん、現場力とやらはこれだけではないだろうが、主力となるのは従業員の善意だ。

 そんなわけなので、アマゾンのモットーは日本企業のありように対する強烈なアンチテーゼと言える。日本企業なら、あるいは日本人なら「善意は役に立たない」と言い切られてしまうと抵抗を感じるかもしれない。だが、現場の従業員の善意に頼っているようでは、デジタル時代にはじり貧だ。そもそもWeb上で完結するデジタルサービスでは、どこに従業員の善意が必要とされるだろうか。必要なのはサービスを提供する仕組みだけだ。