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 前回の「極言暴論」は、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の有名なモットーである「Good intention doesn’t work, only mechanism works!」(善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ)を論拠に、まともな仕組みを持たず従業員の「善意」に依拠してビジネスをする日本企業の大問題をあぶり出した。多くの読者の琴線に触れたようで、Twitterなどで「肯定的な評価」が多数寄せられた。

 実は、極言暴論のコラムコンセプトからすると由々しき事態である。多くの読者に暴論ではなく、全くの「正論」として受け止められてしまったからだ。以前にも説明したが、「暴論のふりをして正論を述べる」のがこの極言暴論の極意である。だから一応、正論と捉えてもらっても構わないわけだが、全くの正論として読まれてしまうと、私の「表現者」としての力量が問われてしまう。

 まあ、前回の記事に書いた通り、「(従業員の)善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」は、日本企業を除く世界中の企業にとって正論そのものである。その正論を論拠に「暴論」を展開しようとしても、暴論の味付けはかなわず全くの正論になってしまうのは、致し方ないかもしれない。いずれにしろ、多くの読者に支持されたのはありがたい。前向きに捉えておこう。

 「ありがたい」と言えば、「善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」と喝破したアマゾンのジェフ・ベゾス氏には感謝しなければいけない。前回の記事を書くなかで、いろいろと気付きがあったからだ。極言暴論の読者ならよくご存じだと思うが、最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わる記事を増やしている。私としては「DXとは何か」「DXを進めるうえでの日本企業の問題点は何か」についてよく理解しているつもりだが、この「アマゾンの正論」によってその論点がさらにクリアになった。

 言うまでもないが、DXは単なるビジネスのデジタル化ではない。DXの魂は「変革」であって、決して「デジタル」ではないのだ。特に、まともなビジネスの仕組みがない日本企業は、現場の属人的な業務を廃し、デジタルを前提としたビジネスの仕組みを新たにつくっていかなければならない。アマゾンの正論は、まさにその点を明確に示している。だから日本企業はいっそのこと、「善意は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」をDXのスローガンにしたほうがよいぞ。

 特にSIerら人月商売のITベンダーはこの言葉をかみしめて、自らのDXを推進すべきだな。DXブームに乗っかって「お客さまのDXを支援する」などと言いながら、自らは相も変わらず前近代的な労働集約型のビジネスにうつつを抜かしているが、そろそろいいかげんにしたほうがよい。というわけで、今回はアマゾンの正論から人月商売のITベンダーの大問題を改めて斬ってみよう。そう言えば、日本の人月商売ベンダーとアマゾンは同じ「IT業界」だったな。なぜこんなに違うのかも含め、改めて考えてみる。