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 ご存じの読者も多いと思うが、この「極言暴論」と対を成す私のコラムに「極言正論」がある。その極言正論の前回の記事で、公正取引委員会を思いっきり批判した。官公庁のベンダーロックイン問題に対する認識があまりに浅過ぎるからだ。今回のこの「極言暴論」の記事はその続編である。ただし、正論に続いて暴論でも公取委に二の矢を放ってやろうというゲスな狙いからではないので、そのつもりで読んでほしい。

 のっけから話を脱線させて恐縮だが、良い機会なので両コラムの位置付けを説明しておく。極言暴論のコンセプトは「暴論のふりをして正論を書く」である。識者のまねをして論を展開しているようでは、誰の心にも突き刺さらないからな。いくら正論であっても、いくら重要な指摘をしていても、読まれないのなら存在しないも同然。だから読者の感情を波打たせるような表現を使ってでも、多くの人に読んでもらうことを目指している。

 一方、極言正論は「識者のまねをして正論を正論として書く」ことにしている。だから、文体も正統派で品を失しないようにしている。早速「読まれないのなら存在しないも同然と言っておきながらどういうつもりだ」と突っ込まれそうだが、そりゃ仕方がない。何せ創刊40年を越える日経コンピュータにも掲載しているから、オトナとしてわきまえる必要がある。ただ、「極言暴論の木村が書いている別コラム」との認知が広がってきたようで、最近はよく読まれるようになった。全くもってありがたいことである。

 さて、話を元に戻して、まずは極言正論で批判した公取委の浅過ぎる認識について説明しよう。公取委が2022年2月8日に公表した「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」にこんな記述がある。「官公庁が調達を行う場合、公共物である官公庁の情報システムにおいて、特定の事業者のみが対応できる仕様や他社の入札参加を困難にするような仕様を望むことは通常考えられない」。報告書を読んでいてこの記述に出合ったときの私の驚きを想像してほしい。

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 そんなアホな、である。官公庁にはベンダーロックインされたがっているIT担当者がうようよいるという現実を、公取委は全くご存じないのだ。もちろん、贈収賄のようなITベンダーとの癒着は「通常考えられない」と言ってもよいだろう。だけど、官公庁のIT担当者は素人同然で、システムの技術面や利用部門の業務に詳しくない。それを熟知しているのはITベンダーの担当技術者なのだから、ITベンダーが交代して彼ら/彼女らがいなくなると一大事だ。既存ベンダーが有利になる仕様を望んでも不思議でも何でもないのだ。

 ただし、今回改めてテーマにしようと思うのはこの件ではない。極言正論の記事で指摘したもう1つの問題のほうだ。公取委は報告書において、官公庁のIT担当者の問題点として、システムや技術への理解不足、知見の乏しさを挙げるばかりで、利用部門の業務が分からないという問題を認識していない。で、ベンダーロックイン回避策として、システムの疎結合化やOSS(オープンソースソフトウエア)の活用、データ仕様の標準化などに加え、技術を理解して仕様書に落とし込めるIT担当者の確保などを説いているのだ。