全4966文字
PR

 いやぁ、この話があんなに盛り上がるとは思わなかった。何の話かと言うと、最近トラディショナルな日本企業でも急速に普及し始めたビジネスチャットを巡る現場の地獄絵図だ。「昭和な会社」とSlackやTeamsなどのビジネスチャットツールが組み合わさると、なぜこのような惨劇が起こるのか。当事者には申し訳ないが、とても興味深い現象である。

 具体的にはこうだ。某企業がビジネスチャットツールを導入した。しばらくして、この話をしてくれた人の上司がビジネスチャットを「使いこなす」ようになったことから、惨劇が始まったという。思いつきレベルの話やしょうもない心配事などをチャットで部下に問い合わせるようになったためだ。部下は自分の仕事を中断し、時間をかけて調べて答えなければならなくなったという。

 例えば上司からこんなチャットが届く。「○○さんとの接待の件だが、本当に和食でいいかもう一度確認してくれ」「××が面白いと常務がおっしゃっていたので、至急調べてくれ」。ちなみにこれらのチャットの内容は私の創作である。実際の内容も聞いてはいるが、それを書くと誰が言ったかを特定される恐れがあるので、私の創作に替えさせてもらった。要は「急ぐなら自分で調べろよ」とか「それ、今じゃなきゃ駄目?」といった類いの内容だ。

 もちろんビジネスチャットを使っていなくても、部下にしょうもない指示や命令を出す上司はいくらでもいる。だがビジネスチャットの問題は、そんな困ったちゃんの管理職を「増力化」してしまう点だ。気軽に書き込めるからなのか、しょうもない指示の類いが以前より格段に増えたそうだ。で、部下たちは返答に時間を取られる。その結果、本来の仕事が遅れ、その上司に「なぜ納期を守れないのだ!」と怒られて疲弊するという悲惨な末路となった。

 この話は当初、この「極言暴論」のねたにするつもりはなかった。だがTwitterでつぶやくと、驚くほどの反響があった。いわゆる「バズった」わけだ。「なぜ当社の内情を知っているのか」「私の上司も全く同じ」「今それで苦しめられている」などといったコメントが続々と寄せられた。昭和な会社と最新テクノロジーの悪夢の融合は、日本の至る所で発生しているようだ。それに改めて考えると日本企業の根深い問題も包含している。

 というわけで今回の「極言暴論」は当初の予定を変更して、ビジネスチャットの地獄絵図について暴論することにした。ビジネスチャットはビジネスコミュニケーションのツールとしてメールに取って代わる可能性を秘める。今のうちならまだ間に合うので、この暴論を読んで「俺のことを言っているのか」と思った人は即刻悔い改めてもらいたい。