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 人月商売かどうかを別にしても、日本のITベンダーは米国などのITベンダーに比べて際立った特徴がある。何が違うって「お客さま起点」「ニーズ志向」で商売をしている点だ。一方、米国のITベンダーなら圧倒的に「シーズ志向」だ。新しい製品やサービスを次々に生み出し、「素晴らしいだろ。ぜひ使え」と客に売り込む。どちらが良いかは、もちろん言わなくても明らかだよね。

 おっと、どちらが良いかを言わないことには「極言暴論」の記事が始まらないな。はっきり言ってしまえば、日本のSIerら人月商売のITベンダーの「お客さま起点」「ニーズ志向」などは、愚か者のたわ言である。マーケティングの教科書なんかに「プロダクトアウトではなくマーケットインで」などと書かれてあるからなのか、とにかくSIerらは客のニーズから物事を発想する。私が忌み嫌う「お客さまに寄り添う」なんて気色悪いスローガンも、そんな発想から出てくるのだろう。

 念のために言っておくと、プロダクトアウトではよろしくないと一般にはいわれているけれども、それはあくまでもまともなプロダクト(製品サービス)をつくれているという前提の話だからな。プロダクトアウトは、自らがつくりたいもの、つくれるものを基準に、商品となるプロダクトを開発することだ。その点、SIerにはプロダクトアウトかマーケットインかの評価に関わるプロダクトなど、まあゼロとは言わないが、ほとんどありはしないからね。

 マーケットインとは、市場調査などを通じて把握した客のニーズを基準に、製品サービスを開発することだ。要するに、こちらも自らリスクを取って開発・販売するプロダクトがあることが前提である。そんな製品サービスがほとんどなく、ひたすら客のご用を聞いて、一品モノのシステムをつくったりお守りをしたりしているSIerには、縁もゆかりもない世界だ。SIerの「お客さま起点」や「ニーズ志向」は自らの言葉通り、マーケティングなどの努力はゼロで、単に「お客さまに寄り添っている」ことにすぎない。

 さて、そんな日本の人月商売のITベンダーと米国のITベンダーを比較してみる。まず米国のITベンダーだが、プロダクトアウトで最新技術を実装した製品サービスをどんどんリリースしている。言っておくが、プロダクトアウトは必ずしも悪いわけではないぞ。マーケットインの発想を忘れてはいけないが、最先端のITベンダーが自分たちの技術でつくれるプロダクトを出さないでどうする。「素晴らしいだろ。ぜひ使え」と客に提案し、客の企業もまた競争優位を保つため、新技術を実装したプロダクトを我先にと採用しているわけだ。

 それに対して日本では、「お客さまに寄り添う」SIerが市場調査などではなく、個々の客のご用を聞き、その要望通りにシステムをつくり、お守りまで引き受ける。客は客でシステムトラブルなどを恐れ、枯れた技術、要するに競争力の落ちた古い技術を使うよう求め、SIerも「お客さまが求めている」として古い技術にしがみつく。プロダクトアウトでシーズ志向のITベンダーが存在する米国との差はあまりにも大きい。