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 この「極言暴論」は2023年3月をもって10周年を迎えた。思いもかけずよく読まれ長期連載となったので、本来なら「祝10周年」として読者の皆さんに感謝の言葉を述べるべきところだが、全くその気になれない。特に「極言暴論のファンだ」というCIO(最高情報責任者)やSIerの経営者に言っておきたい。記事の内容を支持するのなら、とっととやるべきことをやってくれ。そうしたら、このコラムもめでたく終了だ。

 とはいえ、せっかくの10周年なので、極言暴論の発足の経緯をまずは簡潔に記しておく。最初の記事は2013年3月21日に、日経クロステックの前身のITproに掲載された。実は、極言暴論は当初、日経コンピュータの連載として同年3月7号にスタートした。それをITproに転載したのが、今に続くこのコラムだ。ちなみに日経コンピュータでの連載は「雑誌に載せるには過激過ぎる」といった議論もあり、2013年末をもって終了。別コラムに衣替えした。それが今に続く私のもう1つのコラム、「極言正論」(当初は「焦点を読む」)である。

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 まあ連載開始当初はいろいろあったとはいえ、コラム名を極言暴論としたのは我ながら上出来だったし、今振り返っても、当時の編集長などがよくぞOKを出してくれたなと思う。極言暴論というコラム名があったからこそ、多少なりとも「過激な」言い回しで、日本企業の経営者の「ITオンチ」ぶりやIT活用の惨状、そして多重下請け構造など人月商売のIT業界の理不尽にバッサリと切り込めた。若い頃、尊敬する編集長が「真実や正しいことはいつも当たり前のことなんだ。だから読んでもらう工夫に知恵を絞れ」と言っていた。極言暴論は私なりの回答である。

 企業のIT部門や人月商売のITベンダーの関係者には、丸投げや多重下請けなどの問題を指摘する「正論」をぶつけられたときの決めぜりふがある。「確かに問題だが、それは昔から言われてきた」とか「10年、20年も前から似たような話を聞いている。今更言われてもね」といった類いだ。これは愚か者や負け犬のたわ言であり、IT部門やIT業界の面々はどんなに問題点を指摘されても「当たり前のこと」としてスルーするほど鈍かったわけだ。

 その点、極言暴論の枠組みはこうした懲りない面々にも多少なりとも効果がある。極言暴論のモットーは「暴論のふりをして正論を書く」だが、暴論ふうに正論を打ち込まれると、感情が波打つのか少なくとも正面から受け止めてしまう。若手をCOBOL技術者に仕立て上げる悪行を斬り捨てた記事に激怒した人が多数いたように、強い反発を呼ぶこともあるが、それこそが狙い。反発したら反発したなりに、少しは物事の道理を考えるようになるからだ。

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 いずれにせよ、「暴論のふりをして正論を書く」という極言暴論の試みは、今で言うとこところのDX(デジタルトランスフォーメーション)などに取り組む、心あるIT関係者から一定の支持を得たし、技術者からCIOやSIerの経営者に至るまで幅広いファン層を獲得することもできた。コラムニストとしてはありがたいことなのだが、さすがに10年も続くと「うーん」と考えてしまうぞ。これだけの長期にわたって連載を続けられたのは、暴論するネタが尽きないからだ。果たして懲りない面々は悔い改めたのだろうか。それが問題だな。