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 最近、IT業界の関係者と人月商売の多重下請け構造についてディスカッションして、少し反省させられた。何の事かと言うと、私はこの「極言暴論」などでIT業界の多重下請け構造を散々批判してきたわけだが、その構造の捉え方が随分浅かったことだ。「人月商売のSIでは6次請け、7次請けもざらにある」だけでは多重下請け構造の実態に迫ったことにはならなかった。

 その関係者が詳しく語る最近の多重下請けの実態を聞いていて思い至った。この記事のタイトル通りに、「そうか! IT業界の多重下請けは3層構造と捉えるべきだ」と。個々のシステム開発プロジェクトで使っているITベンダーが3次請けまでであろうと、7次請けまでであろうと関係は無い。IT業界の多重下請け構造の本質は3層モデルなのである。

 3層構造の説明の前に、記事のタイトルに触れた流れで先回りして言っておく。SIer関係者の中には「IT業界を十把一絡げでブラック業界と決めつけるとは何事か。少なくとも我々はブラック企業ではない」と怒る人もいるだろう。しかし、そのように怒れるのも、SIerがホワイト企業でいられるのも、人月商売のIT業界が3層に分かれているからだ。これによりSIerはIT業界のブラックな実態から自らを切り離せるのだ。

 さて、その3層構造は、実は単純な話だ。第1層はユーザー企業からシステム開発案件などを元請けとして受注するSIer各社。第2層はSIerが協力会社と位置付ける下請け(2次請け)のITベンダーだ。そして第3層がそれ以外の中堅中小ITベンダーで、彼らは個々の案件ごとに3次請けになったり7次請けになったりする。つまり、元請けのSIerや2次請けの協力会社とは違い、第3層のITベンダーの多重下請けにおけるポジションは固定されているわけではない。

 単純化して言うと、第1層が仕事を取り、第2層が人を集め、第3層が人を出す役割となる。もちろん第1層のSIerはプロジェクトマネジメントや品質管理なども担うが、規模の小さな案件だと第2層の協力会社に丸投げするケースも多い。いずれにしろ、システム開発で実際に手を動かす実行部隊は第2層の協力会社が組成する。その中に第3層から集められた技術者が多数含まれ、「人売り」「ピンハネ」と非難される悪しき慣行は技術者集めの過程で生じる。