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 外資系ITベンダーから言わせると「日本企業はジェントルマン」だそうだ。何の事かと言うと、言い値でライセンスを買ってくれるユーザー企業は世界を探しても日本企業以外に見当たらないのだという。もちろん、ジェントルマンというのは皮肉以外の何物でもない。要は、日本のユーザー企業の交渉下手は外資系ITベンダーの間では有名なのだ。だから「ジェントルマン」は「カモ」に置き換えたほうがよい。

 念のために断っておくが「悪辣な外資系ITベンダーが日本のユーザー企業をカモにしている」という意味ではない。アホな日本企業がどういうわけか、自らカモになってしまうといったほうがよい。さらに念のために追加で断っておくが、日本企業も事業部門はそんなにアホではない。原材料や製品を購入する際は、相手が外国企業であっても妥当な価格を巡り徹底的に交渉する。なぜかIT部門だけがアホなのである。

 ここまで読んだ日本のSIerの技術者は「それなのに……」とため息を漏らしたかもしれない。そうなのだ。日本のユーザー企業は外資系ITベンダーのソフトウエア製品なら言い値で購入し、その後の保守料金も「高すぎる」と不平を言いながらも支払うのに、これが人月商売のSIer相手だと態度が一変する。システム開発や運用保守を問わず、技術者不足のご時制でも徹底的に買い叩こうとするから、誠に不思議だ。

 で、今、多くのユーザー企業で誠に興味深い現象が起こっている。デジタルの時代で企業のIT関連予算は膨らんだかもしれないが、IT部門がお守りをする基幹系などバックヤードのシステムは長年にわたって減らされ続けてきた。つまり、IT部門の財布は小さくなってしまったのだ。その財布を巡り、ソフトウエア製品、あるいはクラウドサービスを提供する外資系ITベンダーと人月商売のSIerが争奪戦を演じているのだ。

 いや、争奪戦を演じているというのは正確ではない。ユーザー企業のIT部門は外資系ITベンダーにはジェントルマンだから、小さくなった財布からでも支払う額は変わらないか増えるかである。その分、人月商売に支払える額は減る。皮肉な物言いだが、ある意味、これは良いことかもしれない。例えばERP(統合基幹業務システム)の導入の際に、いわゆる“俺様仕様”のアドオンが少なくなるからだ。