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 「木村さん、あなたの大予言はどうやら外れそうだね。2020年代になっても人月商売のITベンダーが相当数、生き残りそうじゃないか」。最近、大手SIerの幹部から私にそんな言葉が飛んだ。私はこの「極言暴論」を書き始めてから一貫して、2020年代の早い時期にIT業界の人月商売は立ち行かなくなるという「SIer死滅論」を唱えているが、この幹部の読みでは少なくとも2020年代の半ばまでは人月商売で十分食えるというのだ。

 SIer死滅論は何度か記事に書いているが、シンプルに説明すると次のようになる。世界的に見て極めて特異な人月商売の多重下請け構造が日本で発達したのは、パッケージソフトウエア製品を使えば済むようなシステムでも独自仕様にこだわり、にもかかわらず自分では作らないユーザー企業の存在があったからだ。特にIT部門が管轄する基幹系システムの開発・刷新案件がおいしい。SIer以下多くのITベンダーの食いぶちとなった。

 パッケージソフト製品を導入したユーザー企業でも、自社の業務のやり方にシステムを合わせるために大幅なカスタマイズを施していた。例えばERP(統合基幹業務システム)なら山のようなアドオンを作り、ERPを「アドオンモンスター」に変えてしまう。ERPの開発ベンダーに高額のライセンス料などを支払うだけでなく、人月商売のSIerらをしこたまもうけさせるという、おめでたい存在なのが日本のユーザー企業だった。

 だが、誕生から50年にわたり綿々と続いてきたIT業界の人月商売も、いよいよ終焉(しゅうえん)が近づいている。今はプログラムコードがスパゲティ化した「田舎の温泉宿」状態の基幹系システムの刷新需要などで大盛況だが、それが一巡すれば人月商売に冬が来る。なぜなら、どんなユーザー企業でも今さら基幹系システムを一からスクラッチで作り直す選択肢はなく、ERPなどのパッケージソフト製品を可能な限りカスタマイズ無しで導入しようとするはずだからだ。

 実際、アドオンモンスターを活用してきたユーザー企業も、刷新に合わせてアドオン数を激減させている。なかには、刷新前に5000もあったアドオンを刷新後は100に減らした製造業もある。このようにアドオンモンスターや田舎の温泉宿を素のERPなどにリプレースしてしまえば、基幹系を巡る大規模な開発はそれにて終了。パブリッククラウドの普及も相まって、人月商売のもう一つの柱である保守・運用業務も急速に干上がっていく。