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 日本企業の大問題としてよく語られる言葉がある。「技術で勝ってビジネスで負ける」である。経営者自身からもそんな嘆きを聞くことがあるが、慎んだほうがよい。なぜなら、経営者としての無能ぶり、あるいは職務放棄ぶりを自ら告白しているのに等しいからだ。

 この「技術で勝ってビジネスで負ける」とは、技術開発では先行するものの、製品化やサービス化で後れを取ってビジネス展開で外国企業に敗れ去るという、多くの日本企業に共通する現象を指す。あるいは製品化でも先行したものの、後発の外国企業にあっさりと逆転されるという事例もある。急速に普及している有機ELディスプレー/テレビはその最たる例だし、電気自動車もそのパターンに陥りつつある。

 理由は既に書いた通り、はっきりしている。日本企業の経営者が無能であるか、職務放棄しているからである。「えっ、さすがにそれは言い過ぎでは」と思う読者もいるかもしれないが、この先を読んでもらえれば納得してもらえるはずだ。さらに言えば、技術で勝ってビジネスで負けるという現象は、私がこの「極言暴論」で何度も書いてきた問題とも符合する。つまり、日本企業のIT活用が愚劣でDX(デジタルトランスフォーメーション)を満足に推進できないのも、全て同根である。

 想像してみてほしい。あなたが新規事業の現場担当者だとする。IT/デジタル関連であろうと、別のものであっても構わないが、自ら開発した技術を用いた新製品/新サービスでビジネスを展開しようと企てていたとして、どのような事業計画書を書いて稟議(りんぎ)を上げるだろうか。将来有望なビジネスになると展望できるなら、追随者が現れる前に一気にマスを取ろうと、積極的な投資計画を事業計画書に書き込みたいところだ。

 だが大概の場合、それは不可能である。簡単な理屈だ。新規事業の担当者はサラリーマンだし、その上司もサラリーマンだからだ。そんな現場レベルのサラリーマンが積極的な事業計画の稟議を回せるはずがない。例えば「3年間は赤字。その間の累損は○○億円」なんて言えるわけがないだろ。仮にそんな事業計画の稟議を回したとして、ボトムアップの過程で「忖度(そんたく)大魔王」の中間管理職たちに潰されてしまう。

 だから「初年度は赤字だが、翌年度に黒字化を目指す」といった事業計画書を書かざるを得なくなる。必然的に投資を抑制して、ちまちましたビジネスとなる。最近は「スモールスタート」という便利な言葉があるから、担当者もそれでよいと錯覚してしまう。ビジネスが本当に有望なことが明らかになった場合も、大幅な先行投資に踏み切れない。「堅実な成長」などと言っているうちに、「おっ!これいいじゃん」と外国企業が大規模投資に踏み切り、一気に市場を覆す。で、これを称して「技術で勝ってビジネスで負ける」というわけだ。