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 SIer、特にその経営者に聞きたいのだが、同じことを繰り返すつもりなのだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令されてはや1カ月。2020年5月31日までの延長も決まり、経済の停滞は続く。もはや本格的な不況が到来するのは避けられない。これから人月商売のシステム開発案件は干上がり始める。その際、同じことを繰り返すのかという問いである。

 「お前、何の話をしているんだ」といぶかる人は、人月商売のIT業界にはいないはずだ。不景気になり開発案件が少なくなると、SIerは下請けITベンダーを切り捨てる。過去に何度も繰り返してきた所業だ。ただ今回はリーマン・ショック並みの大不況になるか、1929年の世界大恐慌以来の特大不況になるかといったレベルだから、その切り捨て度合いはすさまじいだろう。

 リーマン・ショックの4年後、2012年にアベノミクスが始まった。それから今まで、日本経済は曲がりなりにも好調を維持してきた。そのおかげか、本来ビジネスモデルを変えなければいけないはずのIT業界は労働集約型の人月商売の繁盛を続けてきた。

 何を言いたいのかと言うと、私が極言暴論で何度も指摘してきたSIerの生き残り策の「非道っぷり」は、全て過去の話を思い出して書いたものだということ。極言暴論を書き始めてから今に至るまで人月商売のIT業界は技術者不足が続き、下請けITベンダーを切り捨てるどころか、「素人同然でも構わないから人をよこせ」などと言って、下請けITベンダーから技術者をかき集めていた。で、新型コロナ禍の直前は空前の技術者不足だった。

 これからやって来る不況期は、極言暴論を書き出してからは初めての局面になる。というわけで、SIerの下請け切りを昔話としてではなく、これから先、リアルタイムに見聞きすることになる。しかもリーマン・ショック以上の不況となると、基幹系システムの刷新プロジェクトといった大規模案件は軒並み凍結されるのは確実だ。以前とは比べものにならないくらい人月商売の市場が急激に縮小するだろう。

 まさにIT業界の多重下請け構造はこれから先、「景気の調整弁」としての本領を発揮する。システム開発案件の多くが凍結されて総人月工数が急減すれば、それに比例して技術者の仕事が失われる。人月商売だから、これは当たり前だ。で、その調整弁として切り捨てられるのは、多重下請け構造の底辺にいるようなITベンダーの技術者たちだ。SIerの経営者は「仕方がない」で済ますのだろうか。