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 今回の「極言暴論」は少し趣向を変えて、日本のIT業界を「温故知新」で斬ってみようと思う。新型コロナウイルス禍で世界レベルの大不況の入り口に立っている今だからこそ、過去の不況期に人月商売のITベンダーの経営者が何を言い出したかを振り返っておくことに意義がある。知っておいて損はない。

 「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、と言っても、人月商売のIT業界の過去をいくら調べても、新しい知見なんか出てきやしないよ」。そう冷笑する読者がいるかもしれないが、確かにその通りだ。何せ不況になると、SIer、下請けITベンダーを問わず経営者が皆、同じことを言い出す。しかも、もう1つ前の不況期にも経営者たちは同じことを言っていた。もう忘れてしまったが、おそらくその前の不況期に同じ発言をしていただろう。

 だから「新しい知見なんか出てきやしないよ」はおっしゃる通りだ。ただ、人月商売のIT業界は人の出入りが激しい。特に最近は空前の技術者不足が続いたために、新たに流入した人も多数いるはずだ。不況期を知らない技術者にとっては、これから書くことは温故知新になるだろう。不況期になると、経営者たちは急に前向きな発言をするようになる。一見、とても良いことのように思えるが、志のかけらもないような経営者まで言い出すようになったら要注意だ。

 SIer、下請けITベンダーを問わず経営者が口にする前向きな発言とは次の3つだ。

  • 技術力を高めるため外注を減らして内製比率を高める
  • ビジネスモデルの変革も視野に入れて新規事業の育成を図る
  • 難易度の高い案件に果敢にチャレンジする

 さらに下請けITベンダーの経営者は次のようなことも言い出す。

  • 下請け仕事だけに甘んじることなく、営業力を強化してユーザー企業と直接取引を増やす

 IT業界に長くいる技術者や極言暴論の熱心な読者は「何だ、そんなことか」と白けるかもしれないが、若手技術者がそんな発言を聞くと「ついにうちの社長もデジタルトランスフォーメーション(DX)に本気になったか」「人月商売から脱却を図るつもりだな」と感動してしまうかもしれない。だが大半はイミテーションである。ちなみに景気が少し良くなり始めると、経営者たちは別の前向きな発言を言い始める。その件も後で触れる。