全5320文字
PR

 新型コロナウイルスの感染がようやく収束の気配を見せてきた。大阪や京都、兵庫では緊急事態宣言が解除され、残る首都圏の4都県や北海道でも解除される日が近そうだ。感染の第2波、第3波が懸念されるから、いわゆる「ウィズコロナ」の状態がしばらく続くとはいえ、徐々にビジネスは「正常な状態」に戻っていく。だがもろ手を挙げて、めでたしめでたしというわけにもいくまい。

 何が言いたいかというと、場合によっては正常な状態に戻るのではなく、これまでの「異常な状態」に戻ってしまうケースもあるからだ。その代表例は言うまでもない。客先にSIerや下請けITベンダーの技術者をかき集めた3密状態で遂行される大規模なシステム開発プロジェクトである。あれは全くもって異常である。その事実に気付いていなかった技術者もいたかと思うが、今回の新型コロナ禍により、さすがにその異常性が身に染みたことだろう。

 緊急事態宣言が出た後も、少なからぬプロジェクトで3密開発が強行されたのは異常さの最たるものだが、そもそも普段から1カ所に大勢の技術者を集めて作業させること自体が異常である。ぎゅうぎゅう詰めの3密状態で長時間作業するものだから、新型コロナだけでなくあらゆる感染症にからっきし弱い。インフルエンザで開発部隊が全滅なんて事態が流行シーズンにはあちこちで発生している。

 こうした「非人道的な」3密開発を、客のIT部門もSIerらITベンダーも当たり前だと思ってきた。だが、これは全く変な話だ。ITの仕事だぞ。しかもITベンダーはシステム全体か一部のコンポーネットかは別にして、請負契約かSES(システム・エンジニアリング・サービス)契約で開発を受託している。ITベンダーの責任において自社オフィスでのリモート開発やテレワークを実施すればよいはずなのに、なぜか常に「全員集合」の3密開発だ。

 今回の新型コロナ禍では、私が極言暴論で3週にわたって3密開発の続行を批判した効果が少しはあったのか、緊急事態宣言後も3密開発を続けていたプロジェクトの多くが遅まきながらもテレワークに移行した。いち早くテレワークに移行したプロジェクトもそこそこあったから、人月商売の技術者の多くがテレワークでの開発業務を経験することになった。で、「何だ、やればできるじゃないか」と実感しただろうし、これまでの3密開発の異常さにも気付いたことだろう。

 それなのに緊急事態宣言が全面解除なり、これまでの日常が戻ってくれば、再びぎゅうぎゅう詰めの3密開発の日々が戻ってくるのは必定だ。金融機関などのシステム開発では「テレワークは不可」として、中断を選んだプロジェクトも結構あると聞く。こちらも当然、ぎゅうぎゅう詰めの3密開発として再開される。つまり新型コロナ感染の収束後には、正常な状態へではなく、異常な状態へと戻っていくのだ。