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 久しぶりに、IT業界の多重下請け構造の問題について正面から書こうと思う。9年前にこの「極言暴論」を書き始めた頃は、多重下請け構造の問題はメインテーマの1つだった。何せ、日本のIT業界がハイテク産業を偽装した非近代的な労働集約型産業にすぎないことの証左であるし、そこは人月商売の理不尽が凝縮された世界だからだ。

 ただし、この件は既に書き尽くした感がある。最近では2年前に「技術者の経歴詐称」問題を取り上げたのが最後だ。この経歴詐称とは「下請けITベンダーから客先に送られる技術者の業務経歴書が全くのでたらめである」というもの。技術者本人ではなく下請けITベンダーの営業担当者らが勝手に虚偽の業務経歴をでっち上げるというひどい話で、まさに多重下請け構造が生み出したあしき慣行である。

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 この経歴詐称問題は、多重下請け構造のIT業界がいかに人でなしかを示す事例なので、もっと早くに書いていなければいけない話だったのだが、間抜けなことに長らく取り上げずにいたのだ。それはともかく、多重下請け構造の問題を正面から取り上げるのは、これで終わりにした。もちろん今でも極言暴論でIT業界の多重下請け構造を話題にしてはいるが、それはあくまでも他の暴論テーマを書くうえでの背景情報として取り上げているだけだった。

 ただなぁ。以前から思っていることだが、IT業界の多重下請け構造の問題はたとえ既に書き尽くしていても、本当は何度でも書かなければならない。なぜなら、今もIT業界の多重下請け構造は、多くの若者を吸い込んでは使い捨てており、偽装請負や経歴詐称なども依然として横行しているからだ。しかも、こうしたIT業界の「闇」を知らない人は今も大勢いる。だから常に警鐘を鳴らすべきなのだが、さすがに以前書いたのと全く同じ内容を書くわけにもいかない。

 そんな訳で極言暴論ではこの2年、多重下請け構造というIT業界の闇を正面から取り上げなかったのだ。ただ最近、この問題をもう一度取り上げるべきだと思うに至るニュースがあった。それは、北朝鮮のミサイル発射などを速報するJアラートも配信する地方自治体のスマートフォンアプリの開発を、中国在住の北朝鮮の技術者が請け負っていたというものだ。IT業界の多重下請け構造には、こうした好ましからざる人物が行政機関や大企業のシステム開発などに入り込んでくる余地がいくらでもあるのだ。

 なぜ「入り込んでくる余地がいくらでもある」と断言できるのか。それは、先ほどの技術者の経歴詐称問題から明らかだろう。IT業界を知らない人にとってはにわかに信じられないと思うが、多重下請けが常態化しているなかでは、客も元請けのITベンダーも、プロジェクトに参画する技術者がどこの誰か、どんなキャリアなのかを気にも留めない。だから経歴詐称も平然と行われるわけで、当然、好ましからざる人物やえたいの知れない企業が紛れ込める。で、今回のような事件が起こる。はっきり言えば、国の安全保障すら脅かすわけだ。