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 人月商売のSIerが「DX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄」として株式市場でもてはやされ、株価が急上昇しているらしい。最近そんな新聞報道に接して、腰を抜かすぐらい驚いた。「ホントか!」と思って調べてみたら、確かに全てではないが何社かのSIerは、新型コロナウイルス禍による2020年3月の株式市場の大暴落以降、急ピッチで株価を戻していた。

 いやぁ、本当に驚いた。と言うか、何か悪い冗談としか思えない。だってそうだろう。SIerを含め人月商売のIT企業が属しているのはIT産業だぞ。ハイテク産業のふりをしているが、その実態は労働集約型産業にすぎない、あのIT産業だ。ITベンダーはいつまでたっても原始的な人月商売から事業を変革しようとせず、客には愚にもつかない基幹系システムを作るばかりで、DXを支援できてもいない。なぜ、そんな人月商売の企業がDX企業として認知されるのか。

 投資家の勘違いも甚だしい。ところが「なぜだ!」と考えていたら、比較的あっさり自己解決した。つまりこうだ。今回の新型コロナ禍で、大企業を中心に多くの企業がテレワークの全面導入に踏み切った。社内の会議だけでなく、客との商談も「Zoom」などのビデオ会議サービスを使うのが当たり前になった。つまり企業の間でビジネスのデジタル化が一気に進んだ。いわば「DXの初めの一歩」を多くの企業が踏み出したわけだ。

 で、VPN(仮想私設網)といったテレワークの環境を提供したり整えたりしているのは誰、という話になる。システム構築などを請け負っているSIerも「DXの初めの一歩」を支援している企業となり、めでたくDX銘柄に仲間入りできたというわけだ。

 もちろんSIerも以前から「DX企業になる」などと宣言し、クラウドベースのサービスやDXコンサルティングといった新規事業の立ち上げを図るなど、客のDXの支援だけでなく自分自身のDXにもそれなりに力を入れてきた。ただし実態は、金融機関などDXに程遠い旧態依然の客の要求を受け、新型コロナ禍のさなかでも当初は3密開発を強行するなど、これまた旧態依然の人月商売のままである。だが「ひょうたんから駒」ということわざもある。投資家の勘違いは、SIerにとって大きなチャンスかもしれない。

 何を言いたいかと言うと、せっかく投資家が勘違いしてくれているのだから、SIerはこれから先、懸命にDX企業になったふりをし続ければどうか、ということだ。最初はうそ偽りにすぎないが、ふりを続ければやがて本当にDX企業に脱皮できるかもしれない。何せ「投資家の期待に応える」という大義があるから、人月商売に凝り固まった社内を変革できる可能性がある。ちなみに、最初は実体が伴っていなくてもふりをし続け、次第に形を整えていくのは外資系ITベンダーがよく使う手である。