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 ユーザー企業に提案営業する際のSIerの行動パターンで、私が以前から奇怪だと思っていることがある。「なぜユーザー企業のIT予算の範囲内でできることしか提案しようとしないのか」である。「そりゃ、客の財布を超える提案をしても無意味だからでしょ」との反論もあるかと思うが、ちょっと考えてほしい。その理屈は大昔なら的を得ていたが、実は20年前あたりから的外れになっているのだぞ。

 SIerの提案は、システム開発費といったユーザー企業のIT予算を探ることから始まる。おっと、こう書くとSIerの優秀な営業担当者に怒られてしまうな。事前に客先に何度も訪問し、IT部門から課題を聞き出し、解決策としてシステム刷新などを働きかける活動が本来の提案営業だし、優秀な営業担当者はそうした活動に日々取り組んでいることだろう。ただ、いずれにせよ、年度予算として確定して初めて正式な提案となる。

 「だから、何を当たり前の事を書いてるの!」といら立つ読者もいるだろうが、今回の話の前提なので、少々我慢してもらいたい。ユーザー企業のIT予算を前提とした提案のポイントは、予算額とほぼ同額の料金を提示する点だ。予算額よりもオーバーするのはもちろん、少なすぎてもダメだ。SIerの人月商売のもうけが少なくなるだけでなく、客のIT部門も困る。後で「なぜ過大な(あるいは過小な)予算を申請したのか」と社内で追及されるからだ。

 今回のテーマから外れるが、こうした「客の財布に合わせて提案する」というSIerの行動パターンが様々な喜悲劇を生む。本来、要件が決まってこそ見積額が決まるはずだが、逆に見積額(=客の予算)が先にあって、要件が後から決まるからだ。その代表例が前回の極言暴論の記事で指摘した、パッケージソフトウエアを使ったシステム開発の大炎上。想定外に縮んだ予算に合わせるため、SIerがパッケージソフトの活用で開発費を安くあげようとして失敗するケースだ。

 いずれにせよ、「客の財布に合わせて提案する」というのは御用聞き、かつ人月商売のSIerにとっては極めて自然な営業スタイルだ。だが、IT業界に長くいる人は思い出してもらいたいのだが、大手SIer各社は20年ほど前に「このままで将来、食えなくなる」と正しく予想して、「ソリューション(解決策)の提供」を営業の際のスローガンに掲げるようになった。その際、SIerが解決するとしたのは、ユーザー企業の経営上や事業上の課題だったはずだ。