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 最近、この「極言暴論」だけでなく、正統派コラムとして行儀良く書いている「極言正論」でも、日本のIT人材育成を巡る議論にあれこれと文句を言っている。

 経済産業省などが「IT人材が足りない。将来はもっと足りなくなる」と言い、与党の政治家らが「国策としてIT人材を育成せよ」と騒ぐ。その結果、リカレント教育(学び直し)などの補助金が上乗せされる。まあ、そんなプロセスを踏んで政策化されるわけだが、安直過ぎないか。もう少し考えたらどうかと思う。

 そもそも、IT人材不足と騒ぐ前に「IT人材の活用面での愚劣さ」に目を向けるべきなんだよね。という訳で、極言暴論と極言正論では、活用面での愚劣さの問題を既に3つ指摘してきた。ところが、である。私も間抜けだった。もう1つ、そして最も重大な問題を指摘するのを忘れていた。で、今回の極言暴論ではその点を明確に示しておこうと思う。ちなみにIT人材を今はやりの「デジタル人材」と言い換えても同じことだ。私もその時々で使い分けている。

 まず既に指摘した3点の問題は次の通りだ。1つ目は、日本企業や行政機関などが余計な仕事にIT人材を動員している点だ。本来ならパッケージソフトウエアやクラウドサービスをそのまま利用すれば済むような案件であっても、利用部門のどうでもよい要求に対応するため、独自システムを開発したり、パッケージソフトなどに大幅なカスタマイズを加えたりしている。しかもその後のシステム保守で、これまたどうでもよい要求に応えるためIT人材を張り付けている。

 要は、IT人材が不足しているのに、IT人材のリソースを無駄遣いしているわけだ。この愚劣さは極言正論のほうの記事で指摘したが、その記事では2つ目の問題も指摘した。IT人材が不足しているのに、ユーザー企業はIT人材を「死蔵」する、という点だ。日本では、終身雇用が原則で雇用の流動化が進んでいない。その結果、IT人材がスキルにふさわしい仕事のないまま、どうでもよい仕事をして時を送るケースが結構あるわけだ。

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 3つ目の問題は、この極言暴論でおなじみの話だ。ユーザー企業がIT人材を死蔵すると言っても、終身雇用である以上、いっときのシステム開発に必要な人材までを自ら抱え込むわけにいかない。で、多くのIT人材を抱えるのが人月商売のIT業界だ。新型コロナウイルス禍で失業や休職などの苦境にある人をIT人材へと「再教育」しても、新たな苦境に陥る人が大勢出てくるだろう。何せIT業界の多重下請け構造の底辺に位置する「人売り」ITベンダーが口を開けて待っているわけだから。

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 この問題を取り上げた記事でも指摘したが、人月商売のIT業界が求めるようなIT人材(デジタル人材)には誰でもなれる。どうも、そのあたりのことを政治家や官僚、そして世間の人たちは分かっていない。ただし、なれるのはITエンジニアではない。大概の場合、人売りベンダーに使い捨てにされるコーダーなどのIT作業員である。しかもその仕事は、先ほど述べた余計な仕事だ。だったら、人材不足は何もIT分野に限った話ではないのだから、他の分野のキャリアを目指してもらったほうがよくないか。