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日本と全く違う、ドイツ技術者の給与は米国並み

 まずは長年の疑問が氷解するに至った経緯を説明しよう。少し脱線するかもしれないが、この経緯自体が興味深い内容を含んでいる。今回の「極言暴論」のテーマとも深く関わる話なので、しばしお付き合い願いたい。

 きっかけは、平成から令和に変わるゴールデンウイークの直前に、同志社大学STEM人材研究センターが東京で開いたセミナーを聴講したことだ。テーマは「世界と比べた日本の技術者の生産性と労働条件」で、ソフトウエア技術者の給与水準などを比較するというなかなか刺激的な内容だった。

 その内容については以前、極言暴論と対を成すもう一つの私のコラム「極言正論」で記事にした。要点を書くとこうだ。まず日本と米国で技術者の給与水準を比較すると、21~30歳は日本が300万円台なのに対して米国は700万円台に乗る。51~60歳で米国が1400万円近くに達するが、日本はようやく800万円だ。

 この比較にドイツの給与水準を加えると、極めて興味深い結果となる。単純比較では、ドイツのソフトウエア技術者の給与水準は日本と大差がない。21~30歳でこそドイツのほうが200万円近く高いが、年齢が上がるとともに差は縮まり、51~60歳でほぼ同水準となる。

 ただし、ドイツの技術者は残業をあまりしない。日本はもちろん米国でも半数以上の技術者が残業をしているのに対して、ドイツでは9割以上の技術者が定時勤務という。そこで1時間当たりの給与を比較する。物価水準も違うので、単純な為替レートではなく、物価を加味した購買力平価ベースで比較すると、ドイツは日本を大きく引き離し米国と肩を並べる。

 これだけでもセミナーに参加したかいがあったが、さらに収穫があった。先ほど書いたように、SAPがなぜドイツにおいてERPで成功したかを知る機会に恵まれたのだ。さらに言えば、業務が標準化されているために技術者は恵まれた処遇を享受できるし、日本のIT業界のような多重下請け構造が存在しないという事実も知り得た。

 それを教えてくれたのが、当時同志社大の客員教授だった山内麻理氏(現・国際教養大学客員教授)だ。セミナー会場で名刺交換したのが縁で、ドイツの事情について話を聞かせてもらった。その際、山内氏が情報処理推進機構(IPA)に寄稿した論文「SAPの成功:ドイツの制度環境からの一考察」を紹介されたので読んでみた。