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 今、コンサルティング業界には、DX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョンや戦略の策定で依頼が殺到しているそうだ。要するに、多くの企業がDXの推進を経営課題に掲げ、その「基本文書」と言えるDXビジョンやDX戦略を策定しようとしているわけだ。こうした動きを素直に受け取れば良い傾向なのだが、だったら「極言暴論」では取り上げない。少しでも舞台裏を探れば、それはもう噴飯モノの話がごろごろと転がっている。

 そもそもDXビジョンやDX戦略の策定が日本企業らしく横並びなのである。何せ業界ごとにビジョンや戦略の策定ブームが起きているらしいからな。つまり、こうだ。ライバル企業がDX戦略などを公表すると、さあ大変。経営者が「我が社もDX推進を打ち出さなければ」と騒ぎ出す。で、ビジョンや戦略の策定を経営企画部門やIT部門あたりに命じる。こうした「騒動」がその業界の各企業で生じ、コンサルティング会社へのビジョンや戦略の策定支援の依頼と相成るわけだ。

 「そんなばかなことがあり得るのか」と疑う読者もいるかと思うが、これが偽らざる現実である。もちろん、全ての企業がそうだと言うわけではないが、多くの企業のDXのレベル感はこの程度なのだ。例えばある企業では、経営者が「○○社(ライバル企業)がDX関連で数十億円を投資すると発表しているから、うちも同額かそれ以上を言わないとだめだ」と騒ぎ出したそうである。コンサルタントが「何に投資するつもりなのか」と聞くと、「そんなことは後から考えればよい」と言い放ったという。

 同業他社との横並びという「昭和の感覚」とDXが結び付くのは、まことに驚くべきことである。ただ、最近は株主や投資家から「DXについて社長の考えは?」などと聞かれることも多いから、ライバル企業が壮大なDXビジョンやDX戦略を発表したりすると、「こりゃいかん。うちも同じようなものをつくらないといけない」と脊髄反射的に思うのだろう。「策定せよ!」と部下に丸投げする。困った部下もコンサルティング会社に丸投げする。で、コンサルティング会社は一種の特需に沸く。

 そんなわけなので、以前この極言暴論で紹介したような笑い話も生まれている。ある製造業のCIO(最高情報責任者)が皮肉交じりにこんな話をしていた。「各企業が打ち出したDX戦略を読むと、どのコンサルティング会社に依頼したか分かるほどワンパターン。どれもコピペレベルの内容」。いくらコンサルタントに丸投げしたといっても、外部の人に「コピペ」と見破られるようでは話にならない。

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 コンサルティング会社からすれば、ちょろい仕事である。日本企業のDXビジョンやDX戦略はこんなふうに粗製乱造されているのだ。だから多くの場合、こうしたビジョンや戦略が策定された途端、その企業のDXは「凍結」されてしまう。どういうことかというと、DXの推進に向けた実践が伴わないのだ。結果、経営者が熱く語った「我が社のDX」とは、DXビジョンやDX戦略をつくることだった(しかも丸投げで)という間抜けなオチがつく。