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新卒者が勘違いしたまま入社する不思議

 優秀な若手技術者が片っ端から辞めていく現象については、この極言暴論でも記事にした。最近、SIerの経営幹部に会うと、決まって「優秀な若手が相次いで辞めてしまう」とのぼやきを聞かされるからだ。つい先日も業界団体の情報サービス産業協会(JISA)が「若い世代の流動化が加速している」として危機感をあらわにした。事態は深刻だ。

 SIerを辞める技術者たちの大半は、同業者つまり他のSIerには転職したりはしない。デジタルビジネスの創出に取り組むユーザー企業、米グーグル(Google)や米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)などの「GAFA」、外資系コンサルティング会社、そしてITベンチャーなど転職先は多岐にわたるが、いずれも人月商売のIT業界から去ってゆく点で共通している。

 つまり、プロジェクトマネジメントという人月商売の元締の仕事は、就活の際に思い描いていた「技術者の仕事」ではないということだ。「新卒の若手が技術者という職に抱くイメージは、Web系システムを独力で開発して成果を出し、スキルアップを図っていくというもの。ウオーターフォール型のシステム開発とのギャップが大きいので失望して辞めていく人がいる」。あるSIer の経営者がため息交じりにこう分析していた。

 確かにプログラマーとしてのキャリアを歩もうとするのなら、新卒の若手が思い描くイメージが正しい。まずはWeb系のビジネスアプリを独力で構築できるようになり、その後でアジャイル開発などチーム開発の流儀を身に付けてゆくべきだ。いきなり大規模プロジェクトのピラミッドに組み込まれてはプロジェクトマネジャーを目指すか、下請けのITベンダーの技術者のようにプログラマーならぬコーダーとして生きていくかしかない。

 しかし不思議だ。だってそうだろう。プロジェクトマネジャーではなく「本物」の技術者になりたい就活生は、なぜ間違ってSIerに就職してしまうのだろうか。いくらSIer大好きセグメントの一員だったとしても、SIerに入社すると、憧れの技術者、つまりプログラマーやアーキテクトとはかけ離れた仕事が待っていると分かっていたのなら、さすがにそんな誤った選択をしないはずだ。

 記事の冒頭で「おいおい、業界研究や企業研究をしっかりやったか」と書いたが、さすがに人月商売のIT業界やSIerの研究を少しはやるだろう。特に業界研究の一環として、この極言暴論を読んでもらえば、SIerは自分が目指すべき会社ではないと、たちどころに分かったはずだ。

 残念ながら極言暴論を知らず、業界研究や企業研究がおろそかだったとしても、面接の際に仕事内容を聞けば「これは違う」と分かるはずだ。SIerにしても、勘違いしている就活生をそのまま入社させて、いずれ「私の思っていた仕事と違う」と辞められてしまうぐらいなら、面接の際に「誤解」を解いてあげてお引き取り願ったほうがよい。だから不思議過ぎる話なのである。