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 今回は、2022年6月に公正取引委員会が公表した調査報告書を元ねたとして暴論しようと思う。その報告書とは「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」。お察しの通りで、私が取り上げるのだから、当然ここでいう「ソフトウェア業」とは人月商売のIT業界のことだ。人月商売のIT業界をよく知らない人がこの報告書を読むと驚くだろうな。多重下請け構造を利用するITベンダーの悪行が余すところなく記されているぞ。

 おっと、少し筆が滑ったな。「ITベンダーの悪行が余すところなく」は言い過ぎだ。公取委なのだから、多重下請けの形を取るITベンダーの取引に関わる悪行に限定して調べている。それにしても「中抜き事業者問題」や「一蓮托生(いちれんたくしょう)問題」など出るわ出るわである。もし、勘違いして人月商売のITベンダー、特に下請けITベンダーに就職してしまいそうな人が目の前にいて、思いとどまらせるにはこれを読ませればよい。そんなレベルである。

 そういえば、以前に公取委が出した官公庁のベンダーロックイン問題などに関する調査報告書に対しては、この「極言暴論」と、暴論と対を成すもう1つの私のコラム「極言正論」で徹底的に批判させてもらった。官公庁にはベンダーロックインされたがっているIT担当者がうようよいるという現実を、公取委は全くご存じないようで、認識があまりに浅過ぎたからだ。「(官公庁のIT担当者が)他社の入札参加を困難にするような仕様を望むことは通常考えられない」といった認識では話にならないのだ。

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 想像するに、官公庁の内部事情は公取委の「管轄外」だったのだろうな。一方、今回の調査対象は公取委にとって本丸だ。IT業界の多重下請け構造の問題を熟知していると自認する私にとっても、4739社から回答を得たという今回の調査の内容はいろいろと学びがあった。実は極言暴論で、下請けITベンダーの技術者が強いられる理不尽に何度も言及し批判してきたが、いわゆる「下請けいじめ」については比較的無頓着でいた。下請けとはいわゆる手配師ベンダーや人売りベンダーであり、手配師や人売りがどうなろうと知ったことではないからだ。

 ただ、このスタンスはよろしくなかったと少し反省している。なぜなら、人売りベンダーが手配師ベンダーあたりから下請けいじめに遭えば、その人売りから客先に送り込まれている技術者が悲惨な思いをすることになるからだ。例えば「つくり直して。ただし追加料金は払わない」などと言われれば、現場はどうなるか。それに最近はフリーランスの技術者が大勢いる。フリーランスにとって、下請けいじめは即座に死活問題となる理不尽である。

 そんな訳で、今回の公取委の報告書はじっくり読ませてもらった。するとそこには、何十年も変わることのない人月商売、多重下請けのひどい世界があった。記事の最後に報告書のリンクを記しておくので、ユーザー企業の人でもIT業界の実情をよく知らないのなら目を通しておくべし。報告書にはユーザー企業が起点となる悪行も記載されているが、そうでなくてもシステム開発などを悪行三昧の連中に発注するのは、ESG(環境・社会・企業統治)のS(社会)の観点から見て大いに問題ありだと思うぞ。