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 世の中には始末に負えない人があちらこちらにいるが、ITの世界にも結構いる。中でも、特に困ったちゃんは「ITオンチの技術者」という面々だ。「いるわけがない」と笑うかもしれないが、それがごろごろいるのである。最新技術を勉強するどころか、ウオッチさえもしない。とにかく「今のIT」のことを何も知らないから、本当に困った連中である。

 今、この「極言暴論」を読んでいる読者のあなたもITオンチの技術者の1人かもしれない。そういえば、私のもう1つのコラム「極言正論」の記事冒頭で、企業のIT部門やITベンダーの技術者に次のような質問をした。「自社や顧客企業の経営者から『量子コンピューターは今までのコンピューターと何が違い、我が社の事業にどんなインパクトがあるか。君の意見を聞きたい』と聞かれたら、適切に答えられるだろうか」――。

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 恐らくほとんどの技術者は「えっ!」と詰まってしまうだろう。なぜかと言えば、量子コンピューターについて何も勉強していないからである。その記事でも指摘したが、経営者に対して次のように冷ややかな感情を抱くかもしれない。「マスコミがつくったブームに乗せられて困ったものだ」。だが、そういう技術者も量子コンピューターに関しては「スーパーコンピューターを超越する性能を実現」といった開発ベンダーやマスコミがけん伝する情報ぐらいしか、知識を持ち合わせていない。技術者なのにそれでよいのだろうか。

 「いやいや、さすがに量子コンピューターのことはまだ知らなくてもよいだろう」と反論する読者も多いと思う。私も量子コンピューターに特別な意味を持たせているわけではなく、単に最新技術の代表例として取り上げただけである。では、既に「既存技術」と見なされるようになった技術についても聞いてみよう。今や企業のシステムでも活用されるようになったディープラーニング(深層学習)やブロックチェーン(分散型台帳)についてはどうか。技術者の皆さんは既に勉強をお済みだろうか。

 こんなふうに聞いていくと、どんどん嫌みになっていくのでもうやめるが、ITオンチの技術者とはかくのごとしである。次々と登場する最新技術を学んでみるどころか、調べてみることもしない。「どんな最新技術でもすぐに活用できるようになれ」とは言わない。ただ、その基本コンセプトや原理はどのようなものか、何ができて将来どのような可能性があるのか、ぐらいは把握しておかなければまずいと思うのだが、最新技術に無知な技術者があまりに多い。

 ひょっとしたら、文系のビジネスパーソンよりITオンチかもしれない。極言正論の記事にも書いた通り、経営者は大きな話題となったものには強い関心を示す。事業や経営への影響を見極めるために本質を知りたいと思うからだ。しかも今は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しないといけないから、まともな経営者や(文系の)経営企画担当者は最新のIT技術をそれなりに勉強している。なので、最もITオンチなのは技術者という事態が多くの企業で生じている可能性がある。