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 経営者や現場の技術者を問わず、SIer関係者がよく口にするフレーズをご存じだろうか。あっ、例の「お客さまに寄り添う」ではないぞ。気色の悪い自己陶酔の言葉であり、あれはあれで問題なのだが、今回の「極言暴論」では別の問題フレーズを取り上げる。「我々ではどうしようもない。お客さまが変わらない限り難しい」というやつだ。

 「お客さまに寄り添う」ほどシンプルなフレーズではなく、いろいろと言い方のバリエーションがあるが、要は「なぜ、○○○ができないのか」などと私のような第三者に聞かれた際、必ず彼らの口から出てくる言い訳の文言だ。例えば客の要求に合わせてシステムをつくると愚にもつかないものが出来上がると分かっているのに、客の要求通りのシステムをつくろうとする。「何でそんなアホなことをするのか」と問いただすと、SIer関係者からこのフレーズが飛び出す。

 今回は前置きなく言うが、これってプロとしてあるまじき言葉だぞ。どこの世界を探しても、およそプロを自称する人でこんなアホは他にいないだろう。例えば料理人がいくら客の要求だからと言って、体を壊すような物を作って食べさせるだろうか。その揚げ句、「お客さまが考えを改めていただかないと、私どもではどうしようもない」などと言い訳することがあり得るだろうか。あり得るわけがない。客に「店から出て行け!」と言っておしまいである。

 料理人がお品書きを用意するのと同様に、SIerなら最適のシステム案を用意するはずだ。もちろん客の要求をある程度聞き入れる必要はあるだろうが、例えば老朽化したゾンビのようなシステムの刷新で「現行通り」はあり得ないだろう。全く客のためにならないし、プロジェクトの炎上リスクは極限まで高まる。こんなとき、普通なら料理人が「店から出て行け!」と言うのと同じで、SIerのほうから取引を終了させるべきである。だがSIerは「喜んで!」と言って請け負ってしまう。

 どんな仕事でも、その道のプロにはプロとしての矜持(きょうじ)がある。商取引は売り手と買い手による価値の等価交換だから、プロはプロとしての価値を提供できないようなアホな仕事は引き受けない。そんなものを引き受けては自身のブランドにも関わるからだ。だから「我々ではどうしようもない」などと言ってないで、とっとと案件から降りるのが、プロとして正しい行いである。

 逆に、どんなアホな案件でも脊髄反射のようにホイホイ引き受けているようでは、プロとは言えない。その意味で、SIerはプロジェクトマネジメント業なのか手配師業なのかは知らないが、その道の専門家だとしても、ビジネスのプロではない。要は「素人」だ。SIer関係者はよく「IT部門は素人だ」と陰口をたたくが(事実はその通りだが)、自身もまたビジネスの素人である。つまり、技術の素人であるIT部門相手に、ビジネスの素人であるSIerが商売するという間抜けな構図となる。