
この「極言暴論」では、日本のIT業界やユーザー企業のIT部門にはびこる悪弊、あるいは不正行為を何度も暴き出してきた。偽装請負、提案書など知的成果物の盗用、理不尽な長時間労働の強要など、挙げれば切りがない。7年以上も書き続けているので、こうした数ある悪弊や不正行為の問題をほぼ書き尽くした感があった。ところが最近、大きな問題を1つ書かずにきたことに気が付いた。
それは下請けITベンダーに勤める技術者の経歴詐称である。人月商売のIT業界にいる人ならもちろん、不正行為の1つとしてよくご存じであろう。下請けITベンダーから客先に送られる技術者の業務経歴書が全くのでたらめである、というものだ。発注元を欺く行為だから一種の詐欺である。
人月商売のIT業界の関係者にはおなじみの不正行為とはいえ、IT業界以外の人にはあまり知られていない。誤解があると下請けITベンダーの技術者が気の毒なので、早めに説明しておく。あくまでも「技術者の経歴詐称」であって「技術者による経歴詐称」ではないぞ。技術者自身ではなく下請けITベンダーの営業担当者らが勝手に虚偽の業務経歴をでっち上げるのだ。
それにしても、何で私はこの経歴詐称問題を一度も極言暴論で取り上げなかったのだろうか。そりゃまあ、この経歴詐称はIT業界でよく知られている事実であるし、日経クロステックでも経歴詐称などの不正行為に苦しめられた技術者の体験談が連載されてもいたので、取り上げなかったのかもしれない。それに極言暴論は事実だけでなく、その背景にある構造的問題などをあぶり出すのを目的としているため、構造問題にまで踏み込めないなら書かなくてもいいやと思ってしまったのかもしれない。
いずれにしても深く反省しなければならないな。やはり極言暴論である以上、IT業界の悪行、不正行為は必ず取り上げなければならない。しかもよくよく考えると、この経歴詐称問題には人月商売のIT業界と、客であるIT部門にまたがる構造問題が潜んでいる。今回の極言暴論では反省も含め、経歴詐称問題の背景にある構造問題を徹底的にあぶり出してみよう。