
最近、「昭和なオヤジ」が自信喪失に陥っているようだ。何の話かというとリモートワーク、テレワークを進めた企業では、昭和なオヤジが「部下に出社を促すことが必要なのでは」と思っても、口に出せないのだという。その結果、企業によっては技術者から役員秘書に至るまで完全テレワークがある種の「既得権」となってしまったところもあるという。
この書き出しを読んで、読者の中には「昭和なオヤジの一味である木村は、やはりテレワーク否定派なのか」と疑う人もいるかと思うが、全然そんなことないからな。やることが決まっている日々の仕事はテレワークで何の問題もないし、打ち合わせや会議もオンラインで十分だ。技術者もコードを書いているだけの付加価値の低い作業はリモートで行えばよい。ウオーターフォール型開発はもちろん、アジャイル開発であっても必ずしもリアルに顔を突き合わせて取り組む必要はない。
人と会うのが仕事だった営業活動でも同じだ。もちろん真正「昭和なオヤジ」が客の場合はリアルに顔を突き合わせて営業するしかないが、ITベンダーの客ならばそんな「昭和対応」を求める人は限られている。トラディショナルなIT部門でさえも、SIerの営業担当者の訪問を疎ましく思っていた人が多い。少なくともクラウドサービスの営業なら、ITベンチャーのようなネットでのマーケティングとリモート営業で十分だろう。
ただし、である。全部が全部、テレワークで済むという話ではない。念のために断っておくが、小売業や旅行業など客とのリアルな接触が前提の仕事の話をしているのではないからな。私が問題にしているのは、イノベーションや変革をもたらそうという仕事がリモートで自宅の部屋に閉じ籠もってできるのかという点だ。今、多くの企業が我も我もと取り組んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、イノベーションや変革を生み出そうとしているのでしょ。その担い手が「引きこもり」状態で実現できるのかね。
実はそんな話をTwitterでつぶやくと、多くの技術者らから反発・反論の声が上がる。私の記事を常々腹に据えかねている人たちはともかく、いつも建設的なコメントを寄せてくれるフォロワーからも反論が寄せられる。そりゃまあ、昭和なオヤジに悩ませられていた人にとって、リモートワークはそこから少しでも離れられるという意味でせっかく手に入れた環境だ。それを少しでも否定するかのような話は全く受け入れられない気持ちはよく分かる。ひょっとしたら「昭和なオヤジの一味による反革命の企て」としか思えないのかもしれないな。
ただ、このように考えてみてくれ。先ほど、アジャイル開発はテレワークでも可能と書いた。いわゆる「リモートアジャイル開発」であり、実践例も多数存在する。では、デザイン思考とリモートワークは共存できるか。デザイン思考は新サービスなどの創出に向けた方法論として日本企業の間で大流行したが、はたしてそれがリモートワーク環境でも可能なのか。とりあえず、この極言暴論を読みながら考えてみてくれ。