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 この「極言暴論」の読者やTwitterのフォロワーから「木村はなぜ『転職せよ』と技術者をあおるのか」といった質問をよく受ける。確かに私は転職をあおりまくっている。極言暴論の記事のうち明確に転職をあおるタイトルを付けたものだけを取っても、この1年間で5本もある。Twitterでも事あるごとに、技術者に転職を勧めるつぶやきをツイートしている。

 当然、確信犯だ。だってそうだろう。ユーザー企業のIT部門や人月商売のIT業界は技術者の不平不満であふれている。技術者の仕事と言えないような管理業務に明け暮れて「つまらない」と嘆いているIT部門やSIerの技術者はとっとと転職したほうがよい。プログラマーとして実力があるのに「人売り」や「手配師」の連中に酷使されている下請けITベンダーの技術者なら、可及的速やかにIT業界の多重下請け構造の鎖から逃れるべきなのは当たり前だろう。

 もちろん転職するかどうかは個人の自由だから、彼らからすると基本的に大きなお世話だ。ただ「木村さんに『転職せよ』とあおられたおかげで転職を決断し、今では○○○でそれなりに楽しく働いています」といった連絡をもらう機会も増えてきた。その意味では大きなお世話であっても、多少なりとも人のためになっているのだろう。

 とは言え、この「人のため」はメインの目的ではない。技術者に転職をあおりまくる主眼は「世のため」である。この件も既に極言暴論で記事にしている。要は、IT業界の多重下請け構造に組み込まれた技術者に転職を促すことで、多重下請けによる人月商売を成り立たなくさせたいのだ。その記事を読んでいない読者は「何をばかなことを言っているのか」と思うだろうが、多重下請けという人でなしの構造を瓦解させる最良の策の1つなのだ。

 本当のことを言えば、世のためになる転職は技術者に限った話ではない。主にIT関係者、特に技術者向けに記事を書くことが多い関係で、「転職せよ」とあおる対象を技術者に限定していたにすぎない。今回の記事では、この制約を取り払おうと思う。技術者に限らず、誰も彼も、経営者であろうと官僚であろうと、とにかく多くの人が転職するようになることが、世のためにつながる。

 何せITやデジタル、そしてイノベーションは人材の流動化との相性が抜群に良い。誰もが当たり前のように転職する世になれば、日本企業などにおけるIT活用の問題点やIT業界における問題点はあらかた解決してしまうはずだ。もちろん変革やイノベーションも起こしやすくなる。そもそも人、特に優秀な人材が1カ所に滞留していると、ろくなことにならない。日本の未来は人材流動化にかかっていると言ってもよいほどだ。だから私は「転職せよ」とあおり続けるわけだ。